死と呪いに縁どられた、道士と剣客の咎を雪ぐ中華ファンタジーホラー

暗殺によって玉座を奪った皇帝の統べる国の奥地には、呪術を扱う道士たちの暗殺集団が存在していた。ひとりの暗殺者は部下の死から脱退を決意し、舞い戻った都で、自身の呪術が何者かに悪用されていることを知る。彼は偶然巡り合った剣客と共に、死期の近い体を抱えて事件の究明に挑む。

確かな知識と流麗な語彙で作られた中華風の世界観だ。重厚だが簡潔でわかりやすいため、中華ファンタジー好きは勿論、普段馴染みのない読者でも楽しめる。厳格な儒教社会や、血塗られた歴史と隣り合わせの殺伐とした雰囲気が根底に覗く人物造形も上手い。

また、薄幸で大人しそうに見えて命知らずな道士と、気風のいい兄貴肌だが血生臭いことにも慣れた剣客のコンビも魅力的だ。彼らは信頼しつつも互いに秘密を抱え、薄氷を踏むような危うい関係でもある。ブロマンスとしても、探偵小説としても楽しめるが、やはり注目すべきが因と縁が折り重なるホラーの部分。反魂の術を巡る事件は、奥に秘めた悔恨や咎も暴き出す。

生者と死者の安寧を奪った者の償いの行脚の先にあるのは、報いか許しか。今後も目が離せない。


(「ホラー×〇〇」4選/文=木古おうみ)

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