異世界の片田舎の小さな商会の息子ヘインとして転生した元商社マンが、赤字続きの商会を盛り返し、地元のオルネ村のために奔走する異世界経営ファンタジーです。
主人公ヘインの行動力と決断力で先細りする地元経済の改革に乗り出す展開に胸が踊ります。
オルネ村の工芸品は品質もよく、職人は勤勉で技術力も高い。しかしデザインが古く、販路も小さい。ならばデザインを一新して、大都市で売ればいいじゃないかと考えるのは誰でもできそうですが、その足で村を飛び出して大商会や貴族と顔を繋いでいく実行力は、なかなか真似できない。
職人を雇って生産ラインを整えたり、各地を歩き回って新たな商材を発掘したり、荷物を運ぶための海運業者を探したりと、みずから各地を歩き回る。営業、バイヤー、生産と流通の責任者、本来なら専任者を置くべき業務を一人で何役もこなす大活躍に圧倒されます。
ひとつひとつは決して大きな儲けではないけれど、汗を流してコツコツと積み上げた行動が成功へと結びつく、その仕事の達成感が彼の生き甲斐なのだと思うのです。
そんなことができるのも己の才覚だけでなく、村の職人や農家が作る生産物が素晴らしいと信じているからなんですよね。リスクを恐れずに行動すること、そして人と人とのつながりを大切にすること。どんな職業であれ、どんな人生であれ、成功を掴むための必須スキルなんだと思います。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)