中華ファンタジー界隈の安泰を確信しました

面白かった。とにかく面白かったです。
物語やキャラクターの紹介は他の方が素晴らしいレビューを書かれておりますので割愛させていただきます。
まず一番素敵だと思ったのは登場人物二人の人物描写です。夜静と洛風のテンポのいい会話には冗長と感じる隙がなく、二人のやりとりを通じて、ドラマとキャラクター性の深化を同時に行なっているところに舌を巻きました。また、中華ファンタジーという、日本人には馴染みのない世界が舞台の話ではありますが、世界観をくどくどしく描写することなく、物語を通じて世界観の奥行きを見せてくれるので、登場人物の歩く速度で一緒に同じ景色を見ている感じがして読みやすいです。
夜静は元暗殺組織のメンバーで深い悲しみと悔恨の中にいる人ですが、どこかとぼけているところがあったり、妙に楽観的だったりと、こういう二面性のようなところが夜静のキャラクターと矛盾なく繋がっており、夜静というキャラクターの魅力になっています。
また、洛風は一見快活明朗で裏表のない、人好きのするキャラクター(私もすぐ大好きなキャラクターになりました!)ですが、会話の端々から窺える暗澹とした過去や、「良心なんぞ犬に食わせた」という発言に違わない冷血非道な振る舞い、夜静への謎の執着など、読めば読むほど謎の深まるミステリアスなキャラクターで大変魅力的です。

作中で登場する呪いや儀式も由来を辿れば興味深い話がたくさん出てきそうなものばかりで、(つまりとってきてつけたようなものではなく)、その儀式に至る過程、村の人々の歴史など、いろんなことがあってココに繋がったんだという、物語の厚みがあって圧巻です。

重厚な世界観とドラマ、キャラクターの魅力がたっぷり詰まった本格派中華ファンタジーミステリーです。

江湖再見!
二人の物語の続きを楽しみにしております。