揺蕩うは、見て見ぬふりの、愚。または哀切。

徹頭徹尾の完成品です。

人の悲哀を紫煙の内に、ふわりと包み込みながら描き出す。

その光景と、文字運びの美しさたるや、凄烈さたるや。

正座をして、背筋を正して。

丁寧に受け取るべき物語でした。

これからもきっと終わることなく続く、自らへの欺きのなかで生きてゆく彼を、

その紫煙は見守り続けることでしょう。

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