朝、星、きらきら

 あったかい光が、ぼくのまぶたをやさしくたたいた。ぼくはそれにていこうしないで、ゆっくりと目を開いた。

 朝が、来ていた。

 だんだん、あたまがわかってくる。ぼくはおきた。もう、朝が来たんだ。だからぼくは、とび上がるように体をおこした。そして外まではしっていく。雪が、やんでいた。もう、ふってなかった。空は白い。でもそれは、くもがいっぱいあるんじゃなくて、ちょっと青い白なんだ。

 はだかになってる足をなでる風がつめたくて、ぼくは思わずぶるぶるっ、ってふるえる。雪がやんでも、冬はさむいね。

 ニワにあるたくさんの花の上に、水のつぶがいっぱいのってる。それがお日さまの光を食べているのかな。お日さまと同じくらい……ううん、お日さまにまけないくらい、キラキラ光ってる。

「おじさん! 雪、やんだよ!」

 ぼくは思いっきりこえを出す。家中に聞こえるように。そうすると、そうだね、なんて言って、おじさんが来てくれると、思ったのに。

 ……来ない。

「おじさんー?」

 ぼくはおじさんのことをよびながら、家の中をあるく。どこ行っちゃったのかな、なんて、思いながら。

 あまりあるかなくても、おじさんのことはすぐに見つかった。おじさんは、いつもの大きないすに、すわっていた。目をとじて、ねてるみたい。

「おじさんー?」

 ぼくはおじさんにちかづいて、おじさんのことをべしべしとたたく。……でもおじさんは、目をあけなかった。もう……おじさんったら、大人なのに、ねぼうしたらダメじゃん!

 ……しばらくおじさんのことをよんだり、たたいたりしてみたけど、やっぱりおじさんは、何をしてもおきそうな感じはしなかった。

 きのう、そんなにつかれたのかな? ……ぼくが、こまらせちゃったかな。

 ぼくはふと、おじさんの手にふれた。てっきり、その手はいつもどおり、あったかいと思ってた。あの、いっしょにマフラーを作ったときと同じように。あの、きのう食べた、シチューみたいに。……でも、今のおじさんの手は、雪にさわったときみたいに、つめたかった。

 ここでねたからかな? ここ、さむいもん。……おじさん、かぜ引いちゃう。

 早く、おこさないと。

「おじさん……おじさーん。早くおきてー」

 手をにぎって、よびかける。……そこで、なんでかな。ぼくは、おとうさんのことを、思い出した。

 大きなはこに入って、おかあさんがそこにむかって、おきて、おきて、なんて言ってた。今の、ぼくみたいに。

 そしてはこの中には、ねてるおとうさんがいた。

 おかあさんは言った。おとうさんは、星になったんだって。

 また会える? と聞いたけど、こたえてくれなかったっけ。

 ……おじさんも、星になったのかな。

 空を見上げる。今は朝だから、星は見えない。

 だけど、ふしぎだな。今のぼくには、星が見えるよ。何かが、空へのぼってる。キラキラ、キラキラ。ぼくの手のとどかないくらい、遠くへ。

 のぼっていく。

 ほおに、何かがさわった。それはあたたかかった。……おじさんの手をつないでない方の手でさわると、それは、あったかいなみだだった。

 ぼくは今、かなしいのかな。

 よく、わかんないけど。

 何となく、ぼくはもう、おじさんに会えないことは、わかった。

 キラキラ、きらきら。光が、空へのぼっていく。

 おじさんのつめたい手をはなせないまま、ぼくはおかあさんが来るまで、いつまでも。

 ぼくはそれを、じっと見つめていた。


【終】

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Diamond dust 秋野凛花 @rin_kariN2

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