「禁足地」。この世には、人が足を踏み入れてはいけない場所がある。
ある地方の川の中州。そこは、ある血族の人間以外が足を踏み入れてはいけない「禁足地」である。
ある血族である布士翠は、大手不動産会社から不思議な依頼を受ける。会社の人間といっしょに、ある場所へと行ってもらいたいというのだ。なんでもその場所は、布士家の人間以外が入ってはいけない「禁足地」なのだという。
その禁足地へ、イケメン副社長とともに足を踏み入れた翠。彼女はそこで怪異に出会う。
そして、甦る幼いころの記憶。不思議な体験と、叔母から聞かされたまじないの言葉。毎年開かれていた祭事。
彼女の家系に連綿と伝えられた役目とは何なのか? 人を寄せ付けない禁足地にはどんな秘密があるのか?
やがて明確な形をもって襲い掛かる怪異。その怪異には、呪術師の施した結界も通用しなかった。
恐怖、恋愛、そして仕事。ちょっと自分の進むべき道を見失っている主人公がいろいろなものを見つけて行く物語。
背筋の凍るホラー展開と、濃厚な恋愛描写。書籍化作者の実体験なのかもしれない編集者とのやり取りとか、そこに混じって作者実体験の怪現象とか、とにかく虚実入り乱れての筋運びが物語の長さを感じさせません。
作者作品に毎回登場するレギュラーの「最低元カレ」と「犬系男子」に、今回はトラブルメーカーとして「ユーチューバー」が参戦。さらなる虚実入り乱れた世界観が楽しめます。
仕事を辞めたばかりの主人公に母から電話が。
不動産会社の人間といっしょにとある物件に同行するという不思議な仕事が舞い込みます。
「どうして自分が?」と不思議に思う主人公でしたが、どうやら、主人公の一族の者でないとダメな理由があるらしくて……
古くからある因習や呪い、それに今を生きる人々の欲望があいまって、どんどんとヤバい方向にむかっていくお話にドキドキ、ハラハラしました。
そこに登場人物が抱える悩みも織り込まれていて、ホラーとしてももちろん面白い作品でしたが、人間ドラマとしても楽しめる内容になっていて、二度おいしい物語でした☆
起こった出来事にしっかりと結末をくれる構成力が素晴らしい!
ホラーを読みたい人にはもちろんですが、妖しい風俗が絡む怪異譚が読みたい方にもおススメ。
どうして布士の一族じゃないとダメなのか?の理由とか、なるほど!って、思わず唸りました。
休職中の主人公・翠のもとに母親経由で胡散臭いアルバイトの誘いが来る。
無視したいところだが追い立てられるように仕方なく面会に出向くことに。
すると、いちおうちゃんとした会社の、しかも副社長からの依頼のよう……でも、やっぱり胡散臭いことに変わりない。
怪異やオカルトとは無縁の生活を送っていた彼女にとって、浄化の能力やら呪いで早死にする宿命なんて話は怪しいだけ。
……だったんですが。強引な脅し文句ともいえるような手を使われて、あれよあれよと社の研修施設でその副社長と一緒に過ごすことになり。そして始まるラブとホラー!!
冒頭、本職を辞め、婚約までした恋人には手ひどく捨てられ、夢だった小説家の仕事も担当編集者にぞんざいに扱われて踏んだり蹴ったりの状況。
ここにさらに禁足地に出向けだの、知らされてない風習や代々引き継いできたお役目なんて話も聞かされる。しかも今回は翠さんが副業で小説家をしていることもあり、そちらの苦労話も挟まってくるわけで。
盛沢山です。そしてもちろんラブもあるんだから。
さらに登場キャラも多彩で面白い。ぐいぐい読めます。
怪奇現象にぎゃーっ。元カレの登場にぎゃーっ。
副社長につけられた愛称にぎゃーー!!
自尊心をズタボロにされた翠さんと未来に希望を抱けない悲運の副社長・石堂。
この二人が出会い、互いに心内を話して惹かれ合っていく姿は感動的でもあります。
夢も希望もあったもんじゃない状況にいた主人公に訪れる結末。冒頭とは全く違う光景がありました。
土地と人間。この二つの面で「軽視されるもの」にスポットを当てた作品です。
人間の暗部が丁寧に描かれており、ドラマとしてとても読み応えがあります。
風を意識させる表現が随所に見られるのですが、この風が「陰」として描かれる場面もあれば、「陽」として描かれる場面もあり、読み手の想像力を掻き立てます。
連綿と続く一族の宿命。忍び寄る不穏な気配。先の展開を想像して胸が高鳴ります。
そしてなにより、登場人物がとても魅力的です。つい、応援したくなります。
作中の二人がイチャイチャしているだけで何時間でも読めてしまいます。
リスペクトを込めて、全力でおすすめしたい作品です。
仕事を辞めて専業作家となった布士翠。その翠にある日母親経由で依頼された内容は、布士にしか入れない「禁足地」に一緒に行ってほしいというものだった。
断るために依頼主である親愛コーポレーションに出向いた翠はそこで美貌の副社長・石堂尊に出逢い、「あなたが断ればわたしは死にます」と脅されて禁足地にともに向かうことになり……。
青嵐様の物語はほんと、外れがないです!(≧▽≦)
今作もホラーと恋愛が見事に融合していて、どちらも楽しめて……!( *´艸`)
ホラーは苦手なのですが、青嵐様の作品だったら読めるという不思議(笑)
しかも、翠さんが作家をなさっているので、途中で入る作家業の話がひとつひとつ刺さりまくり、私にとってはある意味もうひとつのホラーでした……(><)
素敵な恋愛もはらはらのホラーもどちらも楽しめる一粒で二度おいしい物語。
ぜひぜひ味わってくださいませ~!(≧▽≦)
禁足地ってご存知ですか? 歴史や宗教、風習などの理由で、一般の人の立ち入りが禁止されている土地のことです。
主人公、布士翠の親戚の管理する土地の中にも、布士家の人間しか立ち入れないという禁足地がありました。しかし時代の流れか、その土地も手放し、人の手に渡ることに。
と、ここまでは翠に直接関わりのない話だったのですが、ある時、現在その土地を持っている不動産会社の副社長から電話がかかってきます。
副社長こと石堂さんが言うには、なんでもこの土地を開発しようとすると、次々と事故が起こるとのこと。それをなんとかするため、禁足地であったこの土地に入れる布士家の人間の力を貸してほしとのこと。
この現代にそんなオカルトめいたことが。なんてバカにしたものでもありません。古くから受け継がれているものには、それ相応の理由があるのです。しかも石堂さんには、その土地のことを除いても、何やらオカルト的な事情を抱えているもよう。
ごく普通に生活していたのに、突然稀有な事態に巻き込まれるはめになった翠。しかしそれは、恐怖と、そして胸がきゅんとするような出会いの始まりでした。
そう、胸きゅんなのです。本作のジャンルは、紛れもなくホラー。しかしそれと同時に、キャーキャー声を上げたくなるような、甘いラブな展開も待っているのです。
最初は、力になれないと言う翠に対して、脅しというか、めちゃめちゃ後ろ髪を引かれるような物言いで強引に手伝わせる石堂さん。ああだこうだと言い合うその様子は、まるでラブコメにおけるケンカップルの始まりようで吹き出しました。そしてその後も、恋愛好きならニヤリとするような展開が目白押しです。
何より、恋愛において翠の抱えている傷と苦悩。そして、それを知ってしっかりと受け止めようとする石堂さんは、胸きゅん不可避。二人の行く末を応援したくなること間違いなし!
もちろん、ホラーだけあって怖いところはしっかり怖いです。しかもその怖さが、単に怪異があるから怖いという単純なものではありません。
この作者様の書かれるホラーを読んだことのある方ならわかると思いますが、一番怖いのは生きてる人間。今回も、生きた人間の醜ささ身勝手さによる怖さがしっかり書かれていて、だからこそそんなのに負けないでとなるのです。
翠や石堂さんは、怪異や悪意を跳ね除け、愛を育むことができるのでしょうか。
さらに本作の魅力を挙げますと、翠の職業は作家さん。小説と向き合う姿勢や苦労、喜びなどといった作家ならではの部分が書かれていて、カクヨムユーザーなら興味を引かれること間違いなしです。
そしてそして、さらにもうひとつ。
これまで翠と石堂さんを中心に書いてきましたが、自分にとって本作で最推しキャラは別にいます。
第23話から登場する子で、どんなキャラかといいますと、本人曰く「みんな大好き、水地……」いえ、彼の魅力は、自分が語るよりも本編を読んで堪能してもらいましょう。
願わくば、自分と同じように、彼を推す人が一人でも増えてくれますように。
付き合っていた男性に婚約を破棄され、現在休職中の布士翠に掛かってきた一本の電話。
それは翠の一族、布士家がかつて所有していた土地に、一緒に行ってほしいと依頼するものでした。
そこは本来、限られた者しか入ってはいけない曰く付きの場所、禁足地。
最初は気が進まなかった翠ですが、渋々承諾。しかしこれが恐ろしい出来事と、素敵な出会いの始まりでした。
あ、今恐ろしい出来事と素敵な出会いって聞いて、どういう事だって思ったでしょう。
まずは恐ろしい出来事について。曰く付きの土地と聞いて、ピンと来た人もいるでしょう。その土地では起こるのですよ、怪奇現象が。
可哀想な翠。こんな場所来るんじゃなかったと後悔するくらい、次々と恐ろしい目に遇うのですよ。
しかし、世の中捨てたもんじゃありません。
一緒に来るよう依頼してきた、大手不動産会社副社長の、石堂尊さん。彼が実に良い男なのです。
最初は強引に翠を連れて行こうとして、何だこいつって思っていたのですが、話が進むにつれてだんだんとイケメンぶりを発揮。
翠が抱えている悩みや苦しみをよく聞いて受け止めてくれる。そんな石堂さんに、ドキドキさせられます。
しかも禁足地に行くだけのはずが巻き込まれているうちに、翠は石堂の恋人のフリをするという大役まで担うことに。
優しくて大企業の副社長というハイスペックイケメンの恋人役なんて、何という美味しい展開。
そう、このお話はホラーであると同時に、ドキドキする恋愛小説でもあるのです。
禁足地に行くという依頼を受けたのは、翠にとって幸運だったのか不運だったのか。
読んで答をお確かめください。