闇の手触り

 重く垂れ込めた霧の中を一歩一歩すり足で進むような内容だった。共に進んでくれる人間はいるが、霧から出るためではなく単に力尽きるのが二人の目的だ。

 にもかかわらず、整理された無駄のない文章は次から次へと頁をめくらせていく。読者の精神に主人公の抱える苦悩が直接伝わってくるが、安直な妥協もなければ刹那の快楽すらもない。次から次にもたらされるのは、『準備』。ごく近くに迫った終末へ向けた儀式に過ぎない。

 そんな息詰まる展開が、どんな結末へ向かうのか。是非とも実際に確かめて欲しい。

 必読本作。

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