第7話
やがて僕たちは、洞窟の最深部に辿り着く。
そこには一人の少女が寝かされていて……。
「あら? こんなところに人間が来るなんて、珍しいわね」
頬杖をつきながら、のんきに果物を齧っていた。
「口うるさいお父様より、ここのモンスターたちと一緒の方が、よっぽど気楽だったんだけど……」
家出少女のような口ぶりで、彼女が帰宅を渋るので、レナは攻撃魔法をちらつかせて説得する。
「そんなにモンスターが気に入ったなら、あいつらに殉死してみる? あなたのお父様には『モンスターに殺された後だった』って報告してもいいのよ?」
ハッタリに怯えた少女を依頼人の豪邸まで送り届けた時点で、この夜の冒険は終わりとなった。
「ありがとう。おかげで助かったわ」
屋敷を出たところで、レナが素直に謝意を述べてきた。
最初の出会いを思えば、こちらが拍子抜けするくらいだ。
街灯の下で見るレナは、クリッとした瞳が特徴的な、可愛らしい少女だった。少しリリィを彷彿とさせる顔立ちだが、今さら彼女のことを思い出しても、不思議と胸は痛まなかった。
「報酬の一割くらい、あんたに分けてあげたらいいかしら? それとも、別の形でお礼しようか?」
別の形でお礼。
その言葉を聞いた瞬間、僕の頭に浮かんだのは、彼女の戦う
決心した僕は、思い切って頼み込む。
「それならば……。僕をレナの弟子にしてください!」
「はあ?」
困惑の声を上げながらも、彼女は拒絶しなかった。
こうして僕は、冒険者として鍛えてもらうために、彼女のパートナーになった。
二人組の冒険者……という意味のはずだったが、寮を出て彼女の
ただし僕たちは、一般的な恋人同士のようなデートをすることはなく、
出会ったあの日の、東の森での夜の冒険。あれこそが僕たちにとって、初めてのデートに相当するのだろう。
(「初めてのデート」完)
初めてのデート 烏川 ハル @haru_karasugawa
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