第6話

   

「そうだ!」

 一つのアイデアが頭に浮かび、僕はポンと手を叩いた。

「要するに、ピグゴブリンの巣穴を見つければいいんだよね? それなら、足跡を追っていけばいいんじゃないかな?」

「はあ? あんたバカ? この森には色々なモンスターが生息してるし、野生動物だってゴロゴロいるわ。その中からピグゴブリンの足跡を見つけるなんて、出来るわけないでしょう? しかも、こんなに視界の悪い夜の森で!」

「いや、夜だからこそだよ。ピグゴブリンは夜行性だろ? ちょうどウロウロ歩き回って、足跡つけて回っているはずで……」

「だとしても、どうやって他のモンスターや動物の足跡と見分けるの?」

 その点には自信があった。

 僕が生まれた村では牧畜も盛んであり、さらに近隣の森――モンスターが出ないような普通の森――には、様々な野生動物も生息していた。小さい頃から僕は、動物に慣れ親しんできたのだ。

 だからこの東の森でも、動物の足跡は一目でわかる。ゴブリン系モンスターのものも、昼間のモンスター・ハンティングで見たことあるから大丈夫。

「さらに言うと、ピグゴブリンそのものは見たことないけど、明らかにゴブリンじゃない足跡なら、何度も見つけてるんだ。おそらくあれがピグゴブリンの足跡で、だとしたら、それがたくさんあった近くに巣穴もあるはずだろ?」

「そこまで言うなら……。その足跡をたくさん見たって場所まで、案内してくれるかしら?」

「もちろん!」

 半信半疑のレナを連れて、僕は森の奥へと歩き出す。


 問題の場所は、一時間ほど進んだ先にあった。

 二人で魔法灯で照らしてみると、新しめの足跡もたくさん見つかった。

「ほら! 夜行性のピグゴブリンが歩いたばかりの跡だよ!」

「これが……?」

「動物のものじゃないし、昼間のゴブリンとも違うタイプの足跡だからね。間違いないさ!」

 今度は僕が胸を張る番だった。その足跡を追っていくと、木々の間に隠された、洞窟の入り口に辿り着く。

「驚いたわ。こんなところに……」

「うん、僕も知らなかった。洞窟あったんだね」

 二人で顔を見合わせて、頷いてから、僕たちは洞窟へ飛び込んでいく!


 思った通り、ピグゴブリンの巣穴だった。

 洞窟の奥から次々と湧いてきたが、僕たち二人の敵ではなかった。

「はっ!」

 魔法灯を持ったままの左手を突き出して、レナは魔法の炎を放つ。一匹を燃やし尽くしたかと思えば、くりると体を回転させた勢いで、右手のナイフを振るう。その斬撃は、反対側から襲ってきたピグゴブリンの喉を斬り裂いて、的確に致命傷を与えていた。

「凄い……」

 彼女は魔法士のはずなのに、ナイフ捌きも素晴らしかった。しかも、まるで舞い踊るような、美しい戦い方だ。

「何ボーッとしてんの? あんたも戦いなさい!」

 叱咤激励されて、僕も剣を振るったが……。

 彼女が十匹始末する間に、ようやく僕は一匹。二人の実力には、それほど大きな差があった。

   

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