流れ星を見かけたら、少し勇気を出してみよう。

今より少しだけ未来の、メタバースが一般的となった世界の物語です。
そのチャットルームで管理人をしている主人公・ふみ子は、寂しい現実を忘れさせてくれる世界にどっぷりつかっている派遣社員。
そしてある日、ふみ子は常務との不倫を糾弾されて退職へ追い込まれてしまう。
しかしそれは、高田常務という役員の方からふみ子にアプローチしたにも関わらず、ふみ子だけが会社を辞めさせられた、という不当な扱いでもあった。
会社内捜査を切っ掛けとして、ルーム内の皆に協力してもらい、この常務に復讐する、というのが話の始まりとなるのだが――。

電子政府という、中々興味深い政治議論を持つ、骨太な作品です。
作品の骨子に深く組み込まれた問題で、ベーシックインカムの代わりに地域デジタル通貨の導入など、作者様の憂う未来と社会思想が垣間見えます。

ざまぁ系でありつつも、そこはあくまでアッサリと、むしろ本題はその後に展開される物語です。
電子政府の実現と、そこに行き着くまでの構想、現段階に立ち塞がる技術問題……。そういった問題提起を目にして、気に掛けてくれる人が現れてくれたら、という作者様の想いが乗った作品でした。

一つのチャットルームから始まった空想物語が、現実になるかどうか、それはルームにいた彼らにしか分からない事だけれど……。
彼らに幸あれ。未来に祝福を。