古代から綴られる月光に照らされた平安世界

神代の時代からの因縁により、人の世の穢れを払うとして生まれた女神は、月の下でしか神の力を持たぬ、むしろ、その力がないときは、人よりも孤独を抱えた少女でした。
その瞳に孤独を見つけた青年も、また孤独だったのでしょう。
惹かれ合うことが約束事としても、丁寧に心情が綴られていきます。
青年のまわりの女性たちの心模様も、当時の女性の悲哀だと思えます。

恋物語であり、母と子の物語でもあります。
我が子のためなら厭わしきものになる道を選ぶ母も描かれます。
そこに関係する〈事態をおもしろがる男子(ここでは神)〉、ツボでございます。

歴史物を手掛けるときは漢字を使いたくなるものですが、あえてカタカナで示してくださるのも、作者さんの親心を感じます。
歴史物読み、楽しいです。
もちろん、一途な恋をお望みな方にも、お勧めさせていただきます。

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