第2話 王都の騎士様
「王都の騎士、格好いいなぁ。」
「助けられましたね。でも辺境の騎士も格好いいですよ。」
「うん、知ってる。」
エルストベルク辺境伯領は、魔獣が跋扈する地域だ。また隣国との国境に面しているので、外国から攻めて来られた場合、国の防波堤の役割も担っている。
辺境伯領の騎士団は強い。個人的には王国一だと思っている。
辺境を護る騎士のことはとても尊敬している。
出会った騎士達は、勇敢だし、親切だし、よい人達ばかりだった。
でも、先程の騎士を見て、人口密度が多い王都の街で、颯爽と市民を護る騎士も格好いいって思ったんだ。何だか爽やかだし。
「はあ、都会の騎士が格好いいって思う俺って、田舎者だろうか。」
「辺境は田舎といえば田舎ですからね。」
「ジョスぅ、田舎者って言わないでよぉぉ。」
「いや、自分で言ったんじゃないですか。」
ジョセフィンとあれこれ言い合っていたら、衛兵に先ほどのスリに遭った時の状況を確認された。
スリ被害自体は、よくあることらしいのと、兵士が目撃していたこともあって、簡単に起きたことの確認と連絡先を伝えるだけで済んだ。
二人で馬車を降りた場所まで戻ると、王都に到着した時に乗っていた馬車の御者が、心配した様子で待っていた。
「坊ちゃん、ご無事でしたか。」
御者は俺が転んだ時に落とした帽子を持っていて、差し出してくれた。
「ありがとう。ごめんね。お待たせして。」
俺は、帽子を受け取って、代わりに、チップを多めに入れた革袋を手渡した。
革袋の中をちらりとだけ確認すると、御者は人の良さそうな笑顔を浮かべて、ペコペコと何度かお辞儀をしてから、馬車に乗り込んで、走り去って行った。
「やっぱり、お屋敷の前か、商会の前で降ろしてもらえば良かったですね。」
ジョセフィンは、通りを遠ざかって行く馬車を見ながら言った。
王都に入って来た乗り合い馬車が、広場で客を降ろしているのを見て、つい降りようって言ってしまったんだよね。
「ジョス、ごめんね。久しぶりの王都だったしさ。街の感じが見たかったんだよ。」
王都の入り口から、真直ぐに伸びる石畳の道を挟んで、立ち並ぶ店。到着した人達を勧誘する為に、宿の案内を呼びかけるかけ声。
賑やかで活気があるところは、変わっていない。
歩き出そうとして、ジョセフィンに声をかけようと振り向くと、二人分の荷物を持っている。
「ジョス‥‥乗り合い馬車乗ろうか。」
俺の分の荷物を引き取りながら提案する。
辺境伯領を出発した当初は、ジョセフィンは俺の分の荷物も全部運ぼうとしてくれていたんだけど、二人旅だし、俺も荷物を持つようになった。
一人で大きな荷物もってよたよた歩くのは危険だよね。
さっきもスリに遭ったばかりだし。
「さっき馬車を降りた意味、ないんじゃないですか。」
「いや、王都に到着したばかりの人達が見る景色をみるのは、意味あると思うよ。でもこのまま歩くとやっぱり危険かなと。」
「はあ‥‥。」
ジョセフィンの眉が少し下がる。多分、さっきの馬車が去る前に言って欲しい、と思ってるんだろう。俺も思うよ!
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