第12話 入学式

俺の言動に呆れながらもジョセフィンは、俺の総合的な戦闘力自体には疑いを持っていないらしい。

ダンジョンに行くとなったら、止めもせず、せっせと支度を手伝ってくれる。

どうせならガッツり行きましょうと、見た目以上の容量を運べるマジックバック迄用意してくれた。

ダンジョン行きには、父の命令で、エルストベルク領の騎士が3人ついてきてくれた。

一人でも行ける、という気持ちはあったけど、パーティを組んで行くと野営とかも楽しいので、ありがたかった。


色替えの腕輪も無事入手できた。運が良かったのか複数個手に入れられたんだけど、使わない分を売りにだすか迷って、今は売らないことにした。

腕輪は指輪くらいの大きさにも出来る上に、身に付けてさえいれば効果がでるようだったので、目立たないように小さくして鎖を通して、ペンダントのように身につけた。


入学前に入手するものは用意できたので、後は、王都のエルストベルク家の屋敷で、騎士達に混じって剣術の訓練をして過ごした。

俺が騎士科に入ると言うと、エルストベルクの騎士達にまで、変な顔をされる。

両親は、特進科に入った場合の時の事を心配していたみたいで、特に反対はされなかったけどね。


そうして、おれは無事?に、ドラヒェン王立貴族学園騎士科に入学した。

講堂で行われた入学式では、トリー殿下が新入生代表として挨拶をしていた。


俺とよく似た顔で、優雅な微笑みを浮かべているのを見ると、なんとなく居心地悪い気持ちになる。

会場は、懇親パーティの時以上に、護衛騎士が配置されていた。これ、入学式は、生徒以外も出席しているからだよね?普段もこうじゃないよね?


トリー殿下の挨拶も終わって、会場の雰囲気にも少し慣れて来てから、あちこちに視線を巡らせていたら、脇腹をジョセフィンにつつかれた。

ジョセフィンが親指でどこか指し示している。その先を目線で追うと、水色の髪がちらりと見えた。


お見通しか。


少しばつが悪いけど、頷いておいた。

そして、式が終わってすぐ、移動して、フローラの姿を確認する。

相変わらずふわふわした柔らかそうな髪。懇親パーティの時はドレス姿だったけど、制服姿もいい。


近づいていって、少し離れたところで一度立ち止まると、向こうも気がついて俺の方を見た。ふんわり微笑んでくれる。


「フローラ、久しぶりだね。」

「マーカス‥‥。騎士科に入ったのね。」


学科毎に胸章の色が違う。厳密には学年でも違うのだが、騎士科の胸章は、青が基調となっている。そして学年を現す白で縁取られていた。

淑女科の胸章は、赤が基調で、学年を現す色は共通なので、縁は白だ。


「うん。立派な騎士になれるよう頑張るね。」


俺がそういうと、フローラが、「ふふ」と微笑んだ。甘い砂糖菓子のような微笑みだ。可愛い。

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