第3話 入学説明会

そして、やってきた王都ドラン貴族学園の入学前説明会。

学園の門の前には馬車の列が延々と続いている。豪華な馬車。そこそこ年季が入っているけど立派な馬車。まあまあ豪華な馬車など色々。


王国の各地の貴族達が、馬車でやってきている。


門の所では、門番が馬車を止め、証明となるものの提示を求め、家柄を確認してから中に案内をしている。

スムーズに進めばいいが、待たされていた人が門番に文句を言って、余計に時間がかかったりしている。


徒歩で来た俺達。どうやって入ったらいいか分からなくて、馬車が門を通ったタイミングを見計らって、門番に話しかけた。


「徒歩で来ました。通っていいですか?」

「は?徒歩?」


次の馬車の確認をしようとした門番が、驚いたように振り向き、俺達を見ると、門の奥に声をかけた。

別の人が顔を出し、俺達を見て、ああって顔をする。


「お近くにお住まいなのですか?」


ジョセフィンが示した入学案内書を確認しながら、係員が言った。


「ええ。馬車で来ると混むとも聞いたし。」

「確かに混むんですけどね‥‥。」


係員の人が苦笑する。


「あ、徒歩で来てはまずかったですか。」

「いいえ。もちろん徒歩でいらっしゃっても構いません。ただ、ご覧の通り、馬車の往来が激しくなっていますので、お気をつけ下さい。

10年位前にもね、徒歩でいらした方がいましたよ。後で聞いたら、辺境伯のご令息だったとかで。高位貴族の方だったので驚きました。」


徒歩で来る人が、10年居なかったってこと? 

しかも10年前の辺境伯令息って、兄上じゃね?


ちょっと微妙な顔になりながら、案内に続いて門をくぐり抜けた。


説明会が開催される講堂までたどり着くと、受付が有った。

受付に座っていたのは、緑の髪と髭をした大柄な男性だった。腕や胸の筋肉がもの凄い。袖口から見える腕の毛も緑でモサモサしている。

一瞬、緑の熊を思い浮かべてしまった。


「ようこそ。王都ドラン貴族学園へ。私は、ヴォルフガング・ヴェルデ。どうぞよろしく。入学案内書はお持ちですか?」


やや棒読み気味にいい、日焼けした肌に白い歯を覗かせて、ニッと笑う。

ヴェルデ伯爵家は、代々騎士団長を排出している家系だよな。この人も騎士なのかな。


「マーカス・プリメレモンです。」


俺は挨拶をして、入学案内書を出した。ジョセフィンも俺に続く。


「ジョセフィン・サリエットです。」

「プリメレモン家‥‥。サリエット家‥‥。どの辺かなぁ。ここから遠い?」


ヴォルフガングさんが家名に聞き覚えがないのか、首を捻る。


「ええ、ここからかなり南です。」


俺は母方の実家、プリメレモン伯爵家を名乗っている。面倒事が多いのでそうするようにと、父と兄に言われたのだ。


「そうかぁ。説明会の為にはるばる来たのかな。大変だったね。」


確かに大変だったので軽く頷いておいた。

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