語るに落ちる、目から鱗でした。

とても面白かったです!
どのエピソードもどうなるのか気になって気になってのめり込んで読んでしまいました。

美大に潜む、怪異の数々。
霊媒体質によってそれらを引き寄せ、自分が関わる人に不幸をもたらすと考えている主人公の縁。
彼女のキャラクターが非常に魅力的なんですよね。
怪異を相手取る物語ではありますが、「攻め」より「守り」に特化した能力の彼女にできることは怪異に取り憑かれた人と「怪談を催す」ことだけ。
しかし「語るに落ちる」という言葉通り、怪談を語らせることで怪異を弱らせ祓うことができる、という設定の妙にまず唸らせられました。
いつも余裕ありげで天才肌の彼女が、とある青年と出会うことで少しずつ違う顔を見せてくれるのもまた作品の面白いところです。

ホラージャンルではありますが、ゾッと驚かされるというよりはミステリーのように怪異の起こした謎を解いていく物語なので、怖いのが苦手な方も安心して読めると思います。

時にヒヤリ、時にアツく。
そんなメリハリの効いた展開がとても巧い作品でした。
美術の知識はからきしな自分ですが、読みやすい文章だったのもあり勉強になりながら楽しく読ませていただきました。

と、こんな講評っぽいレビューではきっと鹿苑くん的には面白くないことでしょう。
個人的には「能面」のお話が最高に好きでした。
どんでん返しの裏にどんでん返しがあり、「そう来るか!」と何度も驚かされました。

ぜひこの二人が他の怪異に挑む話も読んでみたいです。

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