とても面白かったです!
どのエピソードもどうなるのか気になって気になってのめり込んで読んでしまいました。
美大に潜む、怪異の数々。
霊媒体質によってそれらを引き寄せ、自分が関わる人に不幸をもたらすと考えている主人公の縁。
彼女のキャラクターが非常に魅力的なんですよね。
怪異を相手取る物語ではありますが、「攻め」より「守り」に特化した能力の彼女にできることは怪異に取り憑かれた人と「怪談を催す」ことだけ。
しかし「語るに落ちる」という言葉通り、怪談を語らせることで怪異を弱らせ祓うことができる、という設定の妙にまず唸らせられました。
いつも余裕ありげで天才肌の彼女が、とある青年と出会うことで少しずつ違う顔を見せてくれるのもまた作品の面白いところです。
ホラージャンルではありますが、ゾッと驚かされるというよりはミステリーのように怪異の起こした謎を解いていく物語なので、怖いのが苦手な方も安心して読めると思います。
時にヒヤリ、時にアツく。
そんなメリハリの効いた展開がとても巧い作品でした。
美術の知識はからきしな自分ですが、読みやすい文章だったのもあり勉強になりながら楽しく読ませていただきました。
と、こんな講評っぽいレビューではきっと鹿苑くん的には面白くないことでしょう。
個人的には「能面」のお話が最高に好きでした。
どんでん返しの裏にどんでん返しがあり、「そう来るか!」と何度も驚かされました。
ぜひこの二人が他の怪異に挑む話も読んでみたいです。
美大を舞台にした青春ホラー小説。
W主人公の片方である月浪縁がとにかく素敵でした。とてもカッコいい女の子です。
誰かに怪奇現象が生じると、彼女が描いたその人の絵にも異変が生じる。
そんな不思議な力を使い、縁はたくさんの人の絵を描いて、怪異から人々を助けます。
もちろん、彼女のサポート役の芦屋くんも、義理堅く、誰かの気持ちにしっかり寄り添ってくれるような素敵な男の子です。特に終盤、彼が真っ直ぐに気持ちを伝えるシーンがとてもよかった。あの話、大好きです。
各話に登場する美大生たちも、主人公たちに負けず劣らず個性的です。さすが美大!
また、作品で取り扱われるのは、小説などによく出てくるような怪奇現象ですが、それ故にわかりやすく書かれつつ、伝承や伝説の背景や、現象を引き起こすに至った経緯の描写がしっかりしています。さらに上記の魅力的なキャラクターとの相乗効果もあり、とにかく話のクオリティが抜群に高いです。
怪談をすることで霊を祓うという設定も、小説というコンテンツにマッチしていてとても面白いと思いました。雰囲気がバリバリに出ててすごいです。
そんなわけで、がっつりホラーな小説はちょっと怖い、カッコいい女の子が出てくる小説が読みたい、男女のバディものっていいよね、とにかく面白い作品をよこせ、という方、ぜひこの作品を読んでください!!!