周囲の思惑に振り回されながらも、それでも想い続ける愛情の清らかさ

この物語の登場人物たちは、決して綺麗な言葉で片付けられるものではありません。
愛にのめり込みすぎて周囲を不幸にしてしまった男や、散財をやめられなかったり保身に走る親たち。罪悪感から抜け出せずに時間をかけてしまった女性。誠実だけれど奥手すぎる男性。
様々な人物たちが織りあげる物語は、時に痛々しく、もどかしく、哀れ。それでも、やはり美しい。
それは、「生きている」からなのだと思います。
物語の中で彼らは生きている。
悲しみ、もがき、怒り、絶望し、狡猾で、身勝手。
人間の持つ様々な側面を見せてくれます。
それら絶望の中でも、変わることのないのが、第一章の主人公のゾフィーとラルフの想いの清らかさ。どんなことが起こっても変わらずに相手を慕い続けるというのは、容易なことではありません。それでもこの二人はやり遂げます。
想いの清らかさは変わらない。けれど向きは変わります。
最初は別な方向だった想いの矢印が、月日とともに変化します。
家族となり、子供が育って、想いはいつの間にか愛へと変わっている。
苦しんだ分、精一杯幸せになってほしいと願わずにはいられません。

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