始まりは偽装デキ婚から
田鶴
プロローグ
ノスティツ侯爵家の令息として生まれ、前途洋々と思われたゴットフリートとラルフ兄弟の運命は、祖父が亡くなって父が当主になった途端に坂を転がり落ち始めた。
彼らの祖父がまだ生きていた頃、家は侯爵家らしく裕福で2歳差の兄弟は10歳になる頃には婚約も結んだ。ゴットフリートの婚約相手は、2歳年下のエーデルシュタイン侯爵令嬢アントニア、ラルフの相手は1歳年下のバルトブルク伯爵令嬢レアだ。
彼らの父親フランツは自分の父の死後に当主になってから、ギャンブルや女遊びに歯止めがかからなくなってすぐに借金に首がまわらなくなり、ノスティツ家の経済状態はみるみるうちに悪化した。最後には領地を売却するしかなくなり、侯爵から子爵に降爵させられた。
ラルフとゴットフリート兄弟は家が破産状態になった後、寄宿学校中退を余儀なくされて、幼い頃からの婚約も破棄された。
ゴットフリートは退学によって騎士になる夢が閉ざされて以来、やる気を失って家に閉じこもっている。だが、借金のせいでフランツが強制的に引退させられ、ゴットフリートが名ばかり当主になってしまった。
ラルフは寄宿学校を中退した後、王宮の下級官吏の試験を受けて合格し、それ以来、引きこもっている兄の代わりに当主の仕事もしながら王宮で働いている。
今のノスティツ子爵家には大きすぎるタウンハウスは、ラルフ達兄弟の両親と親に言いなりのゴットフリートの反対で売却できず、使用人棟などがあった広大な敷地を切り売りし、大きな本館を間貸ししてしのいでいる。使用人を大勢雇う金銭的な余裕がないので、維持管理も最低限だが、間貸しする以上、ある程度の水準は維持しなければならない。
家が金銭的に苦しい状態のまま、ゴットフリートとラルフは28歳と26歳になり、結婚どころか新たな婚約の話すらない。兄弟の元婚約者達は2人とも既に結婚して子供もいる。ラルフは元婚約者の幸せを願っているだけで未練はもうないが、ゴットフリートはまだ未練があるようだった。
そんな時に飛び込んだ悲報とそれを受けてラルフに持ち込まれた縁談が2人の兄弟の運命を変えていくことになる。
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