罪の在りかは人か、酒か?

 このSF短編では、ある科学者の研究によって、アルコールが意識を持っていることが判明する。この新たに発見された知的生命体と人類はどのように付き合うのか? やはり酒と人類は長年の友。やはり友好的な関係を結ぶのか……と思いきや、なんと人類は酒を裁判にかけようとする! 法廷に立つことになった酒に対して人類は「酔い」をもたらした責任を問おうというのだ……!

 お酒が原因で生じるトラブルは人にあるのか、それとも酒にあるのか? 普通なら「飲んで酔っぱらった奴が悪い」で話で終わるのだが、酒に意識があるのならば話は違ってくる。突然人類から「酔い」という罪を転嫁された酒はどう反論するのか?

 酒を裁判にかけるという設定がシュールでおかしく、その後に起こる展開もひねりが利いているが、やはり注目すべきはオチの部分。「酔い」という現象に対する痛烈な風刺となっているオチには思わずうならされるし、それと同時につい苦笑いしてしまう。「酒は飲んでも飲まれるな」という言葉の意味を改めて実感できる短編だ。


(「酒は飲んでも飲まれるな!」4選/文=柿崎憲)

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