『領分』を輝かす人の生がここにある
- ★★★ Excellent!!!
本作を拝読して、まず頭に浮かんだ言葉が『領分』。
この言葉には本来、どことなく虚しさが漂うものなのですが、本作品にはむしろ、その『領分』という言葉が力強く響きます。
ここに登場する人々には、越えられない境界線がきっちりと設けられており、それぞれが境界線の中で、他者を思いやり、自らの使命を全うし、命を燃やします。
神に選ばれた人の領分。
やんごとなき立場にある者の領分。
侍女の領分。
暗殺者の領分。
そして、神にも神なりの領分がある。
受け入れ、守り、戦い、必要とあらば自らの人生に終止符を打つ。
そんな彼らの人生模様は、彼ら一人一人に与えられた『領分』という名の枡を、生の輝きでいっぱいに満たしています。
主観的な感想ばかりとなり申し訳ないのですが、時に主観は客観を超える、という事でお許しください。
一目ぼれした相手の長所を具体的に列挙するのも、無粋でしょう?
作者さまの深く柔らかな筆で描かれる彼らの生き様が、私は本当に好きになったのです。