本作を拝読して、まず頭に浮かんだ言葉が『領分』。
この言葉には本来、どことなく虚しさが漂うものなのですが、本作品にはむしろ、その『領分』という言葉が力強く響きます。
ここに登場する人々には、越えられない境界線がきっちりと設けられており、それぞれが境界線の中で、他者を思いやり、自らの使命を全うし、命を燃やします。
神に選ばれた人の領分。
やんごとなき立場にある者の領分。
侍女の領分。
暗殺者の領分。
そして、神にも神なりの領分がある。
受け入れ、守り、戦い、必要とあらば自らの人生に終止符を打つ。
そんな彼らの人生模様は、彼ら一人一人に与えられた『領分』という名の枡を、生の輝きでいっぱいに満たしています。
主観的な感想ばかりとなり申し訳ないのですが、時に主観は客観を超える、という事でお許しください。
一目ぼれした相手の長所を具体的に列挙するのも、無粋でしょう?
作者さまの深く柔らかな筆で描かれる彼らの生き様が、私は本当に好きになったのです。
銀狼山脈という物語の中で重要となる雄大なる山から始まるこの話は、どこか神話の様。
その山の情景が目にありありと浮かぶほどに文章力で書き上げられた物語は、登場人物の一人一人のキャラクターを生々しくみせてくれる。
生きる人の強さ、美しさ、苦しみ、悲しみといった感情が壮大なストーリーの中で生き生きと動き回り、躍動感を生み出しているのではないだろうか。
できれば、もっと読んでいたいと思わせるほどの話を書き上げられた筆者様には感服の思いです。
既に作者様は幾つかの中華ファンタジーを手掛けられていて、そのスピンオフでもあるのだが、そちらを読んでいてもいなくても楽しめる内容となっている。
この話を読んでから、シリーズに入るのもいいかもしれない。
オススメです。
『白規の過去≪5≫』(レビュー現在の最新話のはず)まで読んでレビューを書いています。
作者様の中華ファンタジー『白麗シリーズ』のサイドストーリーです。
上記を読んだことがある方なら「おや? 聞いたことある話が……」となって、ニヤニヤできること間違いなし!(笑)
とはいえ、『白麗シリーズ』の知識がなくても十分に楽しめる内容になっています。
『白麗シリーズ』でも、この作者様は既存の登場人物紹介を丁寧にして下さっていて、三部ある『白麗シリーズ』は三部だけを読んだとしても、話に置いて行かれることはないッ!――そんな印象でした。
なので……
「サイドストーリーだから白麗シリーズを読み終わってからのほうが良いのかな?」と思ってらっしゃる、そこのアナタ!
本作から読んでも全然問題ないと思います(笑)
ちなみに『白麗シリーズ』と同様に、本作も中華な舞台の設定は本格派。それでいて『白麗シリーズ』よりも神話などファンタジックな要素がより多く登場します。
ですので、本格中華な要素を楽しみたい人にはもちろんおススメですが、神様が登場するような神話にも近いごりごりのファンタジーをお求めの方にもおススメ☆
神と人とのかかわりについて書かれたあたりとか、すごく作りこまれていて読みごたえがありました。このあとどんな展開が待ち受けているのか、今から続きを読むのが楽しみです(((o(*゚▽゚*)o)))♪