いやー、すげえ! トリビアがどんどん飛び出す! 面白い!

主人公は幕末に転生します。
彼の名は燐介《りんすけ》。
現代の知識を生かして、スポーツ文化に貢献しよう、オリンピックだあ! と決意します。
で、12歳で外国に渡ります。
で、世界のあちこちの王子様やら皇后さまやら、パイプを作っちゃう!
なんと破天荒な!
体感的には、

スポーツ:4
世界史:3
日本史:3

で構成された物語です。
スポーツに詳しくなくても大丈夫。
へぇ〜! 知らなかった! が次々飛び出して、面白いんです。
幕末だから、まだ、プロサッカーとかない時代なんです。そこで、

・プロ野球の創始者って知ってる?

・はじめのプロゴルファーって知ってる?

・野球黎明期に、剛速球、バッター強打者、両方こなし、なんと、強打すぎて、自分のフルスイングで身体を壊し、試合後に死んでしまった野球選手がいたって、知ってる?

知らなかったよ〜! です。
まだまだ!

・リンカーンの身長がどれくらいだったか、知ってる?

・カール・マルクスが困ったちゃんな性格だったって知ってる?

出てくる、出てくる……!
日本史に詳しい方なら、おわかりになるかと思いますが、幕末は、動乱です。
して、世界に目を向けると、世界もまた、動乱の時期でした。日本も、その渦に巻き込まれていたのだ、と、この物語を読んで知る事ができました。
おもしれ〜!

実在の登場人物たちが、主人公の産み出す熱によって、微妙に、ある時は大きく、史実から違った道を歩みはじめます。
しかし、「沖田総司がもし、✕✕してたら、こう行動してたよね。」
「桂小五郎がもし、✕✕してたら、こう宗旨変えしてたろうな。」
と、実にキャラが生き生き、この時代を生きていますので、読者は違和感なく、この先どうなっちゃうの〜?? と物語に引き込まれるでしょう。

私は、この物語は、W主人公だと思っています。
一人は、燐介《りんすけ》。
Aサイドとして、ヨーロッパ諸国、イギリス、アメリカ……。縦横無尽!
それぞれの国の事情を読者に教えてくれつつ、自分のオリンピック開催という夢に向かって邁進します。
彼は、「歴史にはそこまで詳しくないんだよなぁ。スポーツで名のある人しかわからん」とぼやきながら、歴史の著名人と堂々と渡りあっていきます。自分の口と行動で、前人未到の道をエネルギッシュに切り開いていきます。
もし幕末に、ヨーロッパで活躍する、こんな日本人がいたら、と思うと、痛快です!

もう一人は、Bサイド。
切迫していく幕末を、どうにか、少しでも良くできないか、と、もがきます。
燐介も頭が良いのですが、Bサイドの主人公は、勝海舟に、
「おまえは切れ者なのに、欲がないんだな。」と言わせる、切れ者。
彼は、まわりの者と張り合ってまで名誉が欲しいと思いません。泰然としています。
すごく魅力的です。
でも、剣の腕は弱い。攘夷志士に剣を向けられると、多分すぐ斬られちゃう。
そんな彼が、自分の命を狙う……殺すかどうか、天秤にかけている、攘夷志士三人を、口先だけの議論で圧倒するシーンは必見です。
議論が、熱いの。
言葉のやりとりが、鋭い刃になる。
ずっと議論をしてるだけのシーンが、わくわく、面白い。
なんて良質な物語だろうと思います。

そして、燐介と、Bサイドの主人公が、離れ、時に相まみえ、世界と幕末、二つの流れを、実に見事に一つの物語に織り上げていきます。

これから読んでみようかな?
でも、物語が長いから、読みづらいかな?
と心配になった読者様へ。

・一話は短い。
・主役も脇役もキャラが良い。
・時々ギャグ……、というか、ツッコミが入るのが面白い。
・登場人物は多いが、こんがらがる事はない。
・知らないトリビアが沢山出てくるが、わかりやすい説明がつく。
・世界中を回るが、説明がくどすぎる事はない。

なので、最新話まで、ずっと面白く読めますよ!
良き読書タイムをお約束します。

最後まで長文におつきあい頂き、ありがとうございました。

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