第2話 告白
翌日、いつもは遅刻ギリギリに学校へ向かうがこの日はかなり早く家を出る。学校が開く時間に着けるように。
何故こんなにも早く出たのか、それは誰よりも早く告白をするためだった。ゴミーズが告白がするのは、放課後である。それより早ければ良いはずだが、もし放課後よりも早く告白をされてしまったら取返しの付かない事態になる。それを考慮しての行動だった。
ゴミーズがlino等のsnsアプリで繋がっていたら、そこで告白されてしまう恐れがある。そうしたら、だれよりも早く来た所で無意味だ。だがもしそうならわざわざ日を改める必要はないだろう。計画の確認をしたその日の内に告白すれば良い。そうしないということはsnsではつながってないのだろう。
学校に着いたら、まだ校門は開いていなかった。仕方ないので校門前で開門するのを待つ。
誰もいないだろうと思ったが、数人程校門前に居て驚く。
春も序盤で、特に朝はまだ冷え込む。こんな修行所のような所で待つくらいなら、家で二度寝した方がよっぽど快適だろうに。
コンビニで暖かい飲み物でも買っておけば良かったと後悔していたら、ギギギギギギと門が開く音がして校門が開場する。それと同時に、目的の女の子が登校してきた。
こんなにも早いとは思わなかったが、これで誰よりも早く告白できる。嬉しい想定外だ。
彼女が学校に入ろうとした瞬間、呼び止める。
「ちょっと、話があるんだけど良い?」
彼女はこくんと頷く。
これから告白をしようとするにも関わらず、少年はこれから告白しようとする人間とは思えない程落ち着いていた。それは、きっと好きな人に告白するわけではないからだろう。もし、これが好きな人への告白だったらきっともう少し緊張していたはずだ。
俺はこれから告白をする。好きではない相手に。そのことに少しばかりの罪悪感があるが、だからと言って辞めるわけにはいかない。
冷静な頭で、告白の後の手順について考える。告白し、成功したら休み時間に遭いに行ったりして周囲に付き合ってるアピールをしなければならない。付き合っているという事実を広めゴミーズだけでなく、彼女に害を為そうとする者共への牽制となる。朝も早いこの時間帯では、俺が告白したという事実を知るものは少ない。だから、人が溢れかえっている休み時間等に行動すべきだろう。
これらは告白が成功したという前提だ。もちろん、この告白が断られる可能性もあるがその時はまた違うアプローチを考えるだけだ。例え何度振られたとしても、絶対に付き合ってみせる。そうしなければ、彼女を守れない。
少女の名前は成沢唯と言った。
その容姿はまるで、ドラマの中からそのまま飛び出てきたのかと思えるほどの美少女だった。顔のパーツはどれをとっても完璧で、思わず感嘆の息を漏らすほどだ可愛らしい。腰まで伸ばした一点の曇りもない煌びやかな白髪は、まだ起きたばかりの太陽の光を反射し美しく照り輝いている。
そして、顔だけではなくスタイルも完璧だった。胸はそんなに大きくないものの体全体を見ると、これ以上美しいものは無いと言える程のまさに芸術作品と思える程の調和だった。しかし、そんな完璧なスタイルを持つものの体は小柄だった。だが、それがまた庇護欲を誘い男共を次々と虜していた。
そんな天上の存在に告白をする。そんな、究極体験男子なら1人残らず緊張のあまり1言も発せなくなるだろう。
しかし、有は緊張どころか神経を張り詰めることなくサラリと言う。
「俺と、付き合ってください」
彼女は特段驚いた様子もなく、表情も全く変えずに答える。
「分かった」
「それはOKってことか?」
「そう」
どうやら、告白は成功したらしい。本来の告白成功程ではないが、安堵感が襲ってくる。
これでゴミーズは告白できないだろう。ひとまず安心だ。
やるべき事を果たした、と脳が判断したのかこれまで感じていなかった眠気がどっと襲ってくる。
瞼が半分閉じながら歩きだす。
「眠いの?]
[かなり」
隣を歩いてる少女がどんどん増える感覚を味わいながら、なんとか教室にたどり着く。
「じ、じやああ、また、な」
「分かった」
自分の椅子に座った途端、机に突っ伏す暇もなく意識の糸が切れる。
気が付くと、もう昼になっていた。
しまった!付き合ってるアピールが全くできなかった!
少し落ち込む有。いや、昼と言えばのイベントがあるじゃないか!
彼女の教室まで行き、少女の名前である新橋唯を呼ぶ。
彼女が教室から出てくる。
「お昼、一緒に食べない?」
彼女はこくんと頷く。
その様子を見てをみて、廊下あるいは教室にいる人々がざわつき始める。やっぱり~、とか、まじかよ~といった声が聞こえてくる。
狙いどおりにことが進んでいるらしいと知り、胸をなでおろす。
いつも通り屋上に行き、昼飯を食べ始める。いつもと違うのは連れ添いが居る点だ。
2人と黙々と食べ始める。ふと、彼女の方にめをやるとカロリーメイツを食べていた。
ええっ!?それが昼飯!?少なすぎない!?
そんな視線を気にする様子もなく黙々と食べ進める。それに釣られ、有も黙々と食べる。
会話がないということが耐えられない、という人もいるらしいが有は全然平気なタイプだった。むしろ、何も話さない空間というのは好きなくらいだ。
しかし、そんな有も彼女との会話無き昼食は彼女を守るためとはいえ自分勝手に彼女を作戦に巻き込んだ手前気まずく感じていた。
気まずさに耐え切れなくなった有は、口を開く。
「え~と、成沢は趣味とかある?」
「・・・・・・音楽」
「そっか~!音楽か〜!俺も好きだよ!音楽!聞いてると心休まるもんな〜!今は結構BUMP OF CHICKENとかハマってるけど何かハマってるバンドとかある?」
「ベートーヴェン」
バンド?というか、
「それはオーケストラだ!なんの楽器が好き?」
「ティンパニ」
「渋っ!え~と、何か部活とかやってたりする?」
「家に帰る事を目的とする部活」
「それ、何も入って無いじゃん」
「あなたは?何に入っているの?」
「俺は何も入って無いよ」
「・・・・・・良いと思う」
もしかして、気を遣わてしまっただろうか。というか、気を遣う場所可可笑しくないか。
「最近は、ボンバーマンかな」
「・・・・・・良いと思う」
どうやら、またしても気を遣わせてしまったようだ。というか、普通そこはドラクエとかスマホゲームって答えるべきだよな。俺が人とあんまり話さないの忘れてた。
「あ~、え~と、さ、あの、俺、会話そんなに得意じゃないからさ。話したい事があったら話そう。君も気を遣わず話してくれて全然構わないから。言いたい事言って全然構わないから。・・・どうかな?」
彼女は少し考える顔をした後口を開く。
「私もあんまり空気を読むのが得意じゃない。だから、一緒」
と微笑んだ。
でしょうねと言いかけたが、ギリギリで踏み留まる。
そしてその後一つお願いも言った。
「私、あんまり苗字が好きじゃない。だから、名前で読んで欲しい。私も名前で呼ぶ」
すると彼は少し照れながら唯、と恥ずかしげに呼んだ。その様子を見て少し驚いた様子をしながら、唯は笑った。
「名前だけで、、照れる、、とか、、フフフフフフフフフフフフ」
笑われたのは心外だがそれも気を使ってないことの現れだよな、とポジティブにとらえることにした。
さっきまで俺のおかず達はその悉くが、弁当箱から唯の口へと旅立っていたのだがその旅はしばらくなされていない。
カップ麺が茹で上がる程の時間が経った頃唯はやっと笑い止んだ。
「ありがとう」
「かける言葉がおかしい!」
おそらく、笑わせてくれてありがとうということだと思うが。
スカートに付いた埃を払いながら立ち上がる。
「そろそろ行こうyou中学生」
「誰!?その芸人!」
「ごめん、反応があまりにも中学生だったから」
「フォローどころかただのディスじゃん!!」
あまりにも中学生っぽい反応だったため、中学生というワードが脳に残りそれが名前を呼ぶ時にごっちゃになってしまったのだろう。そうだよな?いや、きっとそうだ。決して反応が中学生過ぎてダサいというこきおろしではないよな?もし、悪罵の方が正解なら・・・帰りにハーゲンダッツを買おう。
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