介在無しの人間関係と乙女が目指す果ての荒野

タイトルにもあるとおり、なによりもまず行動の自由を得ることの喜びがあり、この辺りが作品のもつ独特の爽やかさを象徴しているのではないかな、と思います。

本文の語りはからっとしていて心地よく、途中語られる『愛情が目に見える形として存在する世界で、例外とされ、望まれたようには振る舞えなかったものたち』の話はしっとりしつつも重くなりすぎない塩梅です。

人が二人いればそこには人間関係がうまれるものですが、リリアナ嬢は他者に迎合する形ではなく独自に一対一の関係を築いていくので、運命を切り開く女の風格がある! と思いました。少女とするには少しお姉さんな年齢も絶妙でときめきを感じます。

剣での戦いが深く本筋にかみ込んでいるにもかかわらず恐怖や嫌悪感を呷るような描写がかなりの精度で排除されているように感じられたので、読んだ感じは児童文学とかあの辺の感触に近いのかな、と思いました。シリアスでありつつも陰惨ではなく、安心して読めるが退屈ではないというバランスがとても良かったです。