狂おしい程に歪で美しい人間関係

スピンオフとは思えない程、重厚かつ容赦のないえげつないストーリー。

本編でぶっちぎりにヤバい人物はフィリップかと思いますが、ある種、分かりやすい狂い方なので親しみすら持てます。
しかし、本編ではまだあまり語られていない、欧州監視哨の最高責任者・フランチェスカの狂気や、到底純粋とはいえないクロエとミシェルの歪んだ関係性など、本スピンオフで語られている人間関係は、非常に複雑に絡み合っており、その関係性を一口に説明することは困難を極めるほどです。

そして、本作に登場するデイドリーマーズ、ペンギン。
Web小説書きとしては、思わず「止めてくれ」と言いたくなるような存在でありつつも、ペンギン姿かつその行動に茶目っ気があり、恐ろしい存在のはずが、どこかピエロのような面白さも感じさせます。
また、そんなペンギンとリアライズとサイボーグの関係をうまく戦闘シーンに絡めた描写は迫力があり、非常に面白いです。

文体は、精彩で美しい描写から、臭いすら感じる残酷な描写まで、作者様の技量を感じさせるものとなっています。
専門用語や設定の説明も自然で、本編未読でも、すんなりと作品に入っていけるかと思います。

スピンオフに触れた機会に、本編の方も、ご一読をオススメします。

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