視点は母親。冷蔵庫に死んだ蝉を入れる息子さんのお話。冷蔵庫に死んだ蝉を入れる?この行為の意味のわからなさに母親は困惑しますが、しかし愛すべき息子であることもまた事実です。さらに、読めばこれもその子なりに考えた世界観の元でやった善意なのだと気付きます。私たちも幼い頃、大人の理解を超えた「何か」をしていたのかもしれません。子供の愛らしさと不可思議さがうまく描かれています。
千文字強でさらっと読める、どこか不思議(人によっては不気味)なお話です。まず冷蔵庫に死んだ虫を入れる、という発想がすごい。そして、それを「子供」という「愛すべき対象」でありかつ「どこか身近すぎて不気味な存在」として演出されているのが実に興味深い。ホラーか? と言われるとちょっと物足りない感じがするのが惜しいところですが、ドラマとしてきちんと成立し、完成度は高いと思います。なんとなく不穏な作品を味わいたい方は是非。
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