第5話 サクジツ
公園に座っている彼女に、声をかけた。
「何してるんだよ」
冷ましたフリをしているのを見せつけるかのような態度で、
「遊んでるだけ」
彼女は答えた。
大学の授業もすっぽかして、僕のメールも無視しやがって、いい度胸だ。
「私は、死にたいのです」
まるで自分一人しかいない世界にいるような、彼女は別の時間の流れに乗っているようだった。そこには一人しか、存在しないかのように。
それだけを言い残して、また、姿が消えてしまった。消える前にノイズが走るということは、過去に行ったということなんだろう。
ああ、また探し直しだ。
それから僕たちは、かくれんぼをしているかのように、見つけたら消え、探すというループに陥っていた。
やりきらないと、死に切れない。自殺したい時が訪れても、体を放り投げる決断ができないだろう。
そうやって、毎日生きている。死ぬときは、被害者として飛んでやる、と。
公園から始まり、駅のホーム、自殺スポットの東尋坊まで、場所は多岐に渡った。自殺スポットに行ったときは、本当に終わってしまうと思ったけど、彼女は僕を使って、遊び足りないらしい。
「はぁ」
本当につまんないな。私の人生。
一人じゃ解決できないことがあるなんて、わかってる。だからと言って、必然的に助けてくれる人が現れるわけではない。それは、物語の中だけ。
探し出してくれたとき、どんな言葉を投げかけてくれるか、すっごく期待してた。でも、いい言葉が降ってくるのも、物語だけだった。
人は追い詰められると、言葉を求める。最後に、本当の最後に。
「ねえ、透」
彼女を、地下鉄のホームで彼女を見つけたとき、デートに行こうと誘われた。
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