第4話 途中経過

 結衣からメールが来た。

「もう死ぬことにしたから」

唐突のことに驚きもしたが、結衣の気持ちを理解するのは早かった。

ということは、自殺するのか?嫌だ、消えてしまう、全部。


 結衣とは、現実に失望している部分は共通点だったけど、結衣と二人の中で希望を見出そうと、創っていこうと思ってたのに。なんで。死ぬなんて、やめてくれよ。

 

 最近は、彼女がいる場所を探すためにしか、未来に行っていない。そのためにしか、僕だけが持つものを使っていないのに。


 君がいないと、時間が進んでる感じがしないんだ。不覚にも、そうなっちゃったんだよ。


 考えがぐちゃぐちゃになりつつも、とりあえず返信してみることにした。

「勝手な行動すぎだって」

「今から会わない?」

「携帯の充電切れた?おい」


 全く返信がこない。長文を送るのも、そこまでの関係ではないことはわかってる。と今どこにいるか全く見当がつかない。とりあえず、未来に行って、結衣を探してみることにした。


 三日後に飛んだ。毎週、この時間に結衣は図書室のラウンジに座っているはず。だが、そこに姿はない。まあ探し始めたばかりだから、落ち着いていこう。


 それから三日後に、週に1回のサークルの集まりがあるはず。サークルの活動場所に行ってみても、やっぱりいなかった。


 全部の授業が終わる時間まで、校門で粘ってみたが、見つけることはできなかった。気がつくと、街灯の灯りがつき始めていた。涼しい時期だから、すぐに暗くなりそうな、時間の進みの速さが強調さている。


 時間に背中を押されているような、物理的に急かされているような気がした。


 大学にいないと判断した僕は、アテがないため、大学周りを見て回ることにした。


 本当に探しようがない。プライベートをほぼ知らなかった。普段は何をしてるんだろう。もっと彼女の内側に踏み込んでいたら、よかったのかな。




 もちろん、未来でも腹が減る。コンビニに行って、軽食を買おう。


 悩み事があるときに、人を視界に入れたくない。店員側と反対側の雑誌コーナーに流れるように、コンビニに足を踏み入れた。


 雑誌を軽く流し見した。店員が綺麗に清掃した窓から、建物の並びから変な距離に立地している、公園が目に入った。


 そこには、公園の小さな遊具に似合わない、女性で、大学生らしき服装をした人が、遊具に座り込んでいた。


 



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