最終話 僕にできること、君も。

 今までは、彼女を捕まえようとしても、瞬く間に過去に逃げられた。


自殺場所に行けば、結衣が過去に行って、場所を決め直していた。僕が未来で予想しても、過去を変えられては意味がない。


でも、何か策があるだろうと、未来で何度も失敗してきた。


先回りしたら、先回りすることを見ていた結衣が、別のところに行ったり。


日本最北端の北海道に行って、僕の予想できっこない場所に行ったり。


 未来に頼っても、全部うまくいかなかった。


だから、僕は未来に行くことを、やめる。




「結衣!」


電車から飛び降りた彼女を、咄嗟に追いかけた。でも、間に合う気がしない。


いつも何か不可能なことに出逢ったら、すぐに未来に頼っていた。今頑張ったらどうなるかを、考慮せずに。


けど、わかったんだ。今、ちょっと我慢したら、目の前の景色を変えられることに。


ちょっとだけでいい。自分が、嫌だと本気で思っていることに、手をつけてみる。そしたら、未来なんて関係ない、必要ない。


 今を否定することは、僕らが間違っていた。


今変わろうとと思えば、誰にでも変われるんだ。今なら、小さい行動一つで、未来も、過去までも変えられる。


結衣といるだけで、僕の未来は変わる。


目の前にいる僕と一緒に、未来を上書きして欲しい。


 僕はその場で地団駄をした。結衣は2車両目の屋根に、僕は車両側にいた。だから車掌に地団駄の音が必ず届く。


電車は急ブレーキをして、緊急停止しようと試みる。


結衣の体は前に傾いた。バランスを保とうとしたが、前に数歩、足を出すことになった。


  僕は結衣の方向に向かうように、足を踏み出した。


未来に行く時よりも、力強く。結衣の手を、握った。


結衣は過去に逃げようとしたが、同時に未来に行くことを強く願った。


すると過去に行く力が未来に行く力に引っ張られて、


今にとどまった—————


 


 結衣を、「今」にとどめれるとは思っていなかった。けど、頭で考えた事を超える、偶然が僕らの努力を超えることだって、あるんだ。






 




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過去、未来と君 kiwa @Black4949

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