綿密に作りこまれた、命あるキャラクタたちと共に生きよう

主人公は、魔王配下の四大魔公の末娘、シャノワール・オ・クロック。
彼女は、従者のゴブリンと共に、屋敷の奥で今日ものんびり引きこもっていた。

しかし、彼女はただの引きこもりではない。転移魔法に長けた、オ・クロック家にあっても、とびぬけて規格外の転移魔法の使い手だった。さらに彼女には前世日本の記憶持ち。得意の転移魔法で、地球のものをお取り寄せ―
スイーツやグルメ、漫画なんかを呼び出して、穏やかに暮らしていた。

しかし、それには理由もある。魔界の食べ物やその他が肌に合わない。
他人との関わりに苦痛を感じる。生きずらいさを抱えていたのだ。

そんな彼女はひょんな事から、魔界の王太子、サーイルカークに見つけられてしまった。優秀かつ明確なビジョンを持つ彼は、是が非でもシャノを手元に置きたいと希望して――

というお話。

推せるポイントは、素晴らしい筆致とユーモアたっぷりで描かれるシャノの日常。そしてその裏に読み取れる深いテーマと、人間関係・感情の機微なのです!

こんなにも、深く繊細に描かれた異世界ファンタジーはそう、ありません。
彼女の実家の薔薇園やオ・クロック家の象徴たる時計塔など、情景も美しく描写された上で、それがちっとも冗長にはならず、心地よく世界観に浸れるのです。

ゆっくりと、浸れるファンタジーをお探しの方に絶対的におすすめな本作でした。

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