ファンタジー世界の裏にある謎を解き明かせ

  • ★★★ Excellent!!!

異世界に迷い込んでしまった少年が、謎のロリータ服の探偵少女の助手に無理やり任命され、共に事件を解決する物語。

探偵少女のフルネームは『シャーロット・ホームズ・クリスティー・ドイル・カー・クイーン・ポオ・ディケンズ・モーム・クロフツ・グリーン・ダイン──以下略』というらしい。
シャーロックホームズ以下に本格推理の著名作家の名が並んでいるあたり、この作品はそのあたりの推理小説を意識した世界観だと思われる。
実際、出だしこそメルヘンチックだが、裏の事情が明かされるたび、この異世界は現実を同じような問題を抱え、決して牧歌的な楽園ではないと読者は悟っていく。

とりあえず、異世界でもパワハラが横行してる様子なのは嫌かな……。


シャーロット(以下シャロ)は、見た目とは裏腹にそんな現実を見ても動じない成熟した大人……を通り越して老成と言えるような内面を持ち、そのギャップが魅力になっている。

それに対して、助手の遠崎(トワソン)の方は、今のところ相棒と言えるほど存在感を示せていないというのが正直な感想だ。
推理に重大なヒントを与えるでもなく、実地調査を代わりにやるわけでもない。
自分からはほとんど動かないシャロの身の回りの世話をするのかと思えば、その役はほぼパーフェクトに有能にこなすメイドがいる。
シャロと正反対の意見を出して事件の真相に他の方向から光を当てるというのでもない。ただ脇で推理を聞いているだけだ。

こんなに使えない彼を、シャロはなぜ助手に選んだのか……。
そこのところは未だに明らかになっていないのだが、多分それも謎の一つだ。
話が進めばいずれ解明されるのだろう。

そして、この異世界そのものにも謎がある。なぜ現実世界と同じ言葉が知られているのか、どういう経緯で別の世界の人間が迷い込んでくるのか。
謎が解明されるたびに、新たな謎が生まれ、謎はさらに深まっていく。

読者としては名探偵がすべてを解きあかしてくれるのを待つしかない。

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