異世界Q.E.D. 〜異世界に迷い込んだボクは名探偵役のカノジョに助手役として指名される〜
散花
序題
勇者理論と少女の見解と世界の真実と
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「みんな、憧れるのは子供の頃に見聞きした勇者か何かかい? 誰でも世界を救えるって信じてる?」
そう問いたのは、背丈もあまり変わらない。見た目からしたら同じ年頃だろうと想像できる少女だった。
「たとえ多くの知識があっても、力があっても、名声があったとしても。世界なんて、救えないよ。」
少女は少し寂しそうにそれを話した。それを聞いた自分達に何を求めているんだろう?
「勇者だって世界を救う! とか言っておきながら、自分の周りを救えたらそれで満足するんだよ。それは『勇者の世界』であって、ワタシ達とはなんら関係のない世界さ。」
自分はこの少女の話が好きだ。楽観的な話なんてしない。というかちょっと悲観的すぎるくらい。だけどこの悲観的な世界に、ただただ現実逃避したいだけの楽観話よりずっと自分達のことを理解してくれていると思えるから。
「最近多いんだよね。正義振る割には自己中心的で、憧れた勇者とはほど遠い、勇者のフリをしてる奴ら。」
こんな話ばっかりしてるからだろうか。話を聞いてくれる他の子もかなり少なくなってきた。
「勇者とか救世主とか、自分だけの正義じゃなくて。どこの誰でもいいけど名乗るならそれなりにちゃんとしてくれないとね。」
たまに理解できないことも言うけれど。それは自分の中で何かが足りないだけで、この少女は自分よりずっと見えてるものが多いからだ。
「っと、何の話だっけ。……まぁいいか。つまりね、ワタシ達の世界には実際問題救ってくれる勇者とか救世主とかヒーローとかはいないんだよ。全て自分で解決しなくちゃならない。嫌な世界だよまったく。」
その少女は視線を自分達から外し、天を仰ぎ小さな声で呟く。
「……どの世界でもそれらの原理は全て同じこと、だからね。」
そして目を瞑り今日もまた、期待しない期待の言葉を自分達にかけるのだった。
「いつか君達が最適な答えを見つけてくれるのを、ワタシはいつでも待ってるよ」
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