第1話 桜が咲く前に

春休みが終わろうとしている中、勉強する気にはなかなかなれなくて、朝からずっとごろごろしっぱなし。


去年国語の漢詩で『春暁』とかやったっけ。今の俺の心は、あんな感じだ。


朝からずっとつけてあるテレビでは、毎年恒例の桜前線を放送している。


ソファに寝転がって、ぼんやりとそれを眺めていた。


『大阪市は四月六日に満開になる予定ですね。ちょうどその頃は入学式があると思うのでとても良いタイミングです』

『そうですね。小学生のお子さんだと、青空の下でランドセルを背負って満開の桜と写真を撮ってみたりすれば、一生の記念となるのではないでしょうか』


・・・あーあ、俺も、本州の『入学式に満開の桜』とか経験してみたかった。


本州はもうドピンクに染まってるけど、北海道とか見てみなよ。濃い緑なんだけど。


まだこっちはうっすら雪も残ってるっていうのに、あっちは花見だ酒だってお祭り騒ぎ。


なんてどうでもいいことを考えているうちに、つぎつぎと話題が変わっていく・・・。


『・・・今年のお花見は、高校生時代の友達と集まって男女関係なく盛り上がる予定ですよ!』

『この子、彼氏が来るっていうからテンション超高いんですー』

『ちょっ・・・‼モモってば、全国放送でばらさないで!』


花見の特集が始まり、女子大学生の二人がインタビューを受けていた。


モモという女子にばらされて嫌そうにしているけど、本当は嬉しいんだろっていうのがひしひしと伝わってくる。


でも――ずっと思っていたことがあることを思い出した。


彼氏、彼女。男と女が一緒にいればすぐ付き合ってるとかいう噂ができるのって面倒だと思わない?


『絶対ヒミツにして』『うん、』のなんて、相談した側はただ安心するだけだが、実際は悪魔の言葉だ。


――俺は、「自分が好きになった人」を選びたい。誰だってそうなはずだけど。

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サクラサク。 @Blue-Berry

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