新興宗教にハマり易そうな阿呆を簡単に引っ掛ける方法

@HasumiChouji

新興宗教にハマり易そうな阿呆を簡単に引っ掛ける方法

「あの〜、この映画を観て下さったと云う事は『折伏の工学』の教えに興味がお有りでしょうか?」

 私は、ウチの教団が出資して作った映画「美少女呪詛返し師・蜜っちゃん」を観終ったらしい若いカップルに声をかけた。

 ここは……スクリーン数2つで客席数は合せて400弱の、いわゆる「ミニシアター」。

 本当は経営者が気に入った他ではやってない映画だけを上映したいらしいのだが……それだけでは採算が取れないので、一定以上の客が確実に見込める我が教団の映画を上映せざるを得ない。

 SNSで「映画館で『折伏の工学』の奴に勧誘された」なんて書き込みが有ったが……多分、ここの事だろう。未だに我が総裁の御心を理解出来ない者が多い俗世間の常識では「迷惑行為」かも知れないが……残念ながら、この映画館を維持してやっているのは、我が教団だ。

「ええ……」

「そうですね……」

 私が声をかけたカップルは、戸惑い気味に答えた。

「あれ……ひょっとして……」

「違います。興味は有りますが……まだ、入信はしてません」

「そうですか……では……この冊子をお読みになって……」

「いえ、ボク達は、前々から一度『折伏の工学』の信者の方からお話を聞きたいと思ってまして……」


 近くの喫茶店に入って、そのカップルに我が教団の御教えを詳しく説明した。

 若い2人は、興味深そうに聞いてくれているが……何か、周囲の客の目が痛い。

 まだ、私も修行が足りないのかも知れない。

 しかも、例の伝染病のせいで、この喫茶店は2時間制だ。

 このカップルは、まだ、私の話を聞きたいらしいが、そろそろ時間切れだ。


 いや、本当に「いい客」と云うのは、この2人のような人達の事だろう。

 私達は近くのカラオケBOXに場所を移した。

 この2人は、本当に聞き上手だ。

 反応もいい。

 こちらが笑って欲しい時には、本当に楽しそうに笑ってくれる。

 いいタイミングで「その質問、待ってました」と言いたくなる質問をしてくれる。

 だが、しゃべり過ぎて喉が乾いた。

 私は、ドリンクを口にして……。


 あれ?

 ここは……どこだ?

 記憶が……たしか……カラオケBOXで意識を失ない……。

 おい……?

 何で、椅子に縛り付けられている?

「どうも、本日は、興味深いお話をありがとうございました」

「ところで、私達からも、貴方に、ちょっとした質問が有るのですが……」

 目の前には……あの若いカップル。

 その時、私は、唐突に気付いた。

 何故、映画館で、このカップルに声をかけたのか?

 何故、最初、このカップルを「我が教団の信者かも知れない」と思ったのか?

 ……

「我が教団の御教えに御興味がお有りですか?」

「へっ?」

「ああ、申し遅れましたが……貴方達にとっての『競合他社』『商売がたき』である『シン・家族学会』の者です」

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