「幸せ」ってなんだろう

“シャノの瞳は、今を生きる人間が見せてはいけないほど禁忌的に美しかった。”


「世界電球」の発明により、人々が悲しみや苦しみを感じずに暮らせる世界が実現した……という設定のもと、大多数がその恩恵を享受する中、「世界電球」の幸せパワーが効かない2人にスポットライトを当てて書かれた作品です。そこに流れる思想や言葉選びのセンスに感動しながら拝読しました。

このレビューの冒頭の一文は、本文から抜粋させていただきました。完全な幸せを手に入れた人々は楽しそうですが、どこか深みのない安直さを湛えています。それとは対照的に、幸せになれない少女の切実で奥深い美しさが、この一文で見事に表現されています。

人は暗闇の中で「幸せ」を探してもがき、命の火を燃やすからこそ美しい。この物語は、そのことを教えてくれます。

感動と読後の余韻を残す、ライト文芸らしいライト文芸です。

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