悪役令嬢は推理で人生を切り開く。

「パーティーで婚約破棄をされた悪役令嬢はどのようにしてこの窮地を乗り越えるか?」

これは現代悪役令嬢もの作品のもっとも普遍的でもっとも重要なテーマといえる。誰もがどこかで見たことがある冒頭。だからこそ、そこで独自性を出すのが大事になるわけだ。

さて本作の悪役令嬢、ファルラ・ファランドールも上記のシチュエーションに追い込まれるのだが、彼女の場合は数日前に亡くなった王子の死を持ち出し、病死に見せかけて王子を殺した犯人を糾弾することで、この場を逃れる! そう彼女が持つのは抜群の推理力。彼女はこの世界に唯一存在する探偵なのだ!

前世から探偵であった彼女はこの世界についてこのように述べる。

「この剣と魔法の世界では、いかようにもトリックを作れますし、いかようにもトリックを破ることができるでしょう。だから、そこはどうでもいいのです」

だから彼女が重視するのは事件の動機。そしてそれを解明すべく周囲の人間の秘密を次々に暴き立て、場を大混乱へ導く彼女の推理は実に痛快。

また事件を解くばかりではなく、実家から追放されたり、魔族に襲われたり、ダンジョンに呑み込まれたりと異世界ファンタジーならではのイベントが盛りだくさんなのも本作の特徴。次々と困難に見舞われながら、それでも彼女はたくましく生き延びる。これも全て愛するメイド・ユーリスとの幸せを掴むため。ミステリー要素のあるファンタジーが好きな人にはお勧めの一作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)

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