まるで市販の本のような完成された面白さを求める読者様におすすめです。
推理物は面白く。
キャラは魅力的。とくに主人公。頭が良く、「それはそれは」と食えない性格。
クライマックスで出る啖呵が格好良く、痺れるくらいに良い。
相棒、恋人のユーリスも可愛い。
物語全体を通しての謎。脇役達も個性豊か。バトルも豊富にあり、まあ読者サービスが旺盛な物語なのです。
表現、状況の描写が分かりやすく抜きん出ているので、ちょっと凄惨なシーンでは目をつむりたくなるほど。
何より、愛が良いです。
憎しみながら、愛する愛。
命の限りを感じながら、相手を思いあう、切ない愛。
百合に抵抗がある方であっても、すっと読めると思います。
異世界転生×探偵ミステリー×百合が、奇跡のように噛み合って、絶妙な面白さを醸し出している作品。
剣と魔法がある世界なので、謎解き部分は「誰が?」「どうやって?」よりも、「どうして?」が優先されるので、ミステリー初心者でもすんなり物語の中へ入って行くことができるでしょう。
さて。
主人公のファルラ様は、悪役令嬢として転生しました。
そんな彼女が心から求めて愛する者は、ワンコ系メイドのユーリス。
この2人の密度の高い百合が、今作の見どころです!
お互いが大事で、大切にし合っているからこそのシーンや、必死になり取り乱す姿が、本当に尊い。思わず拝んでしまいたくなる程です。
ひとつひとつのエピソードは気軽に読める長さなので、話数が多いな……と思って遠慮するのは勿体ない。
読み始めたら止まらない。謎が解決するまで読み止めたくない!
ファルラとユーリスの百合シーンをもっと愛でたい!ああっ、尊いぃ……。
……と、夢中にさせてくれるお話が沢山あるのです!
是非、ご一読ください!
『名探偵悪役令嬢』のテーマには、ただ2人一緒に暮らしていたい、というささやかでシンプルな願いがあります。
しかし、その願いはおもに人間社会の仕組み(戦争と信教の問題)から、許されざる願いとされてしまいます。
命が惜しければ生き方を変えろ、とあらゆるところからの圧にファルラは屈せず、ときにひとの力を借りつつ最後には愛する人の手を握る物語に仕上がっています。
そこにいるキャラクターは皆一癖も二癖もある人達ばかりで、なにより皆とてもしたたかに生きています。
このしたたかさが物語の魅力のひとつでもあり、私の好きなところです。
ここまで読んできて、少しでも気になると思った方は是非ご一読ください。
『名探偵悪役令嬢』、おすすめです。
第一話を読んでのレビューになります。
【面白かった点】
悪役令嬢の婚約破棄モノで、「テンプレか」からの怒涛の推理合戦という展開がユニークで面白かったです。
一般的な推理短編とは違って、謎や伏線の提示はなく、最初から答え合わせを見せられることになるのですが、展開が一気呵成なので引き込まれます。推理小説好きな人ほど、文字通りのミステリのテンプレから外れた構成に驚くでしょう。
【良かった点】
百合、ホモ、オネショタと、キャラクターが立っていて、誰が味方で敵なのか、すんなりと登場人物が頭に入ってくる配置になっているのはお見事。
【期待している点】
正当な謎、伏線、それに読者への挑戦といったミステリ要素の強いエピソードも読みたいです。まだまだ一話以降もたくさんあるようなので、これから楽しみに読んでいきます。
「パーティーで婚約破棄をされた悪役令嬢はどのようにしてこの窮地を乗り越えるか?」
これは現代悪役令嬢もの作品のもっとも普遍的でもっとも重要なテーマといえる。誰もがどこかで見たことがある冒頭。だからこそ、そこで独自性を出すのが大事になるわけだ。
さて本作の悪役令嬢、ファルラ・ファランドールも上記のシチュエーションに追い込まれるのだが、彼女の場合は数日前に亡くなった王子の死を持ち出し、病死に見せかけて王子を殺した犯人を糾弾することで、この場を逃れる! そう彼女が持つのは抜群の推理力。彼女はこの世界に唯一存在する探偵なのだ!
前世から探偵であった彼女はこの世界についてこのように述べる。
「この剣と魔法の世界では、いかようにもトリックを作れますし、いかようにもトリックを破ることができるでしょう。だから、そこはどうでもいいのです」
だから彼女が重視するのは事件の動機。そしてそれを解明すべく周囲の人間の秘密を次々に暴き立て、場を大混乱へ導く彼女の推理は実に痛快。
また事件を解くばかりではなく、実家から追放されたり、魔族に襲われたり、ダンジョンに呑み込まれたりと異世界ファンタジーならではのイベントが盛りだくさんなのも本作の特徴。次々と困難に見舞われながら、それでも彼女はたくましく生き延びる。これも全て愛するメイド・ユーリスとの幸せを掴むため。ミステリー要素のあるファンタジーが好きな人にはお勧めの一作だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)