あとがき
手を繋ぎ合うふたりの女の子がいました。
令嬢とメイド。
母を止めたかった後悔と母を殺してしまった後悔。
巨大な魔力を持つ者と天才的な魔法使い。
母に愛されず産まれた者と母のために作られた者。
ファルラとユーリスは、その手を離させようとする、あらゆることをはねのけて、信じる道を最後まで駆け抜けました。
皆様の応援でここまで続けられました。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
以下、冬寂さん名物、やたら長いあとがきです。
■元ネタ
悪役令嬢の嫌われているところが、ホームズが人に嫌われている理由と同じだったら……というところから始まりました。きっと婚約破棄の場で推理ショーを始めるだろうな、とかいろいろイメージが浮かび、それをまとめていきました。
百合化は私のテーマなので、必然的にバディ物ということになり、そこから古畑任三郎を持ってきました。キャラ的には悪役令嬢が古畑任三郎、メイドが今泉君ということで、これはぴったりな関係ではないかなあと。ユーリスのおでこをぴしゃりと叩くのはここからです。
■長編化に向けて
短編にまとめて公開したところ、Twitterでフォロワー様から「続きはよ」と言われまして、これはありがたいと思い、長編化しました。あの一言がなければ、この作品は生まれていませんでした。五体投地で大感謝です。
長編化に際しては、いろいろと加えています。
たぶん話を転がす役がいるだろうということで、お金でなんとかしてしまう人と、裏側で処理してました的な人のふたつを加えました。おかげでほどよく転がってくれたと思っています。
敵側はいろいろ考えたのですが、あちらにも問題を出そうということで、権力闘争的なものがあり微妙なバランスでいまがある、というようにしてみました。なんだかんだ言って『サイティーン』の同盟ぽくなり、これはこれで良かったかなと。ずっと不思議だった「ゴブリンがどこから生まれた? どうやって繁殖させている?」というのに答えを出せましたし。
こうしたコンテンツを面白くする方法のひとつとして「時間制限」があります。先輩方にほかの方法も含めていろいろ教わっていたので、こちらでもそれを何も考えず採用しました。今回はユーリスの寿命というのをひとつわかりやすくいれましたが、王家側が崩壊していくのも時間の問題、という形でも入れてみました。
だいたい下敷きにしているのは、ロシアのロマノフ朝崩壊のあたりです。ファルラ達がいなかったら、ネフィリアの遠征に失敗して、アシュワード王家が民衆によって打倒されていたばすです。これは日露戦争からのロマノフ王朝あたりと同じ感じですね。ラスプーチン的な変な輩が取り入ろうとしているはミルシェ殿下、ニコライ2世的なアレなところはジョシュア殿下にやってもらいました。空中戦艦が王都を襲うあたりは、ロシアの戦艦ポチョムキンの反乱と似させました。
私はいつも新しいことをやるときはひとつ無茶をしようとしていまして、今回は毎日更新に挑戦してみました。毎日3000字前後、9月から書き始めて1月末で50万字を超えました。よく書いたものです。トラブルもたくさんありました。それでも続けられたのは皆様からの応援のたまものだと思っています。
■体制について
どうにも文が荒れるときがあり、途中から蒼桐大紀さんに校正という形で、書いたものを毎話見ていただきました。誤字からキャラの挙動、ガジェットの設定も指摘いただき、たいへん勉強にさせていただきました。何より一ファンとしてここが良かった、と教えていただけたのは、本当にうれしい体験でした。ありがとうございました。ここからお礼を申し上げます。
■おもな登場人物
〇ファルラ・ファランドール
悪役令嬢。胡乱な人。迷惑な人。嫌われている。
モデルはだいたい古畑任三郎。嫌われている感じはカンバーバッチのSHERLOCK。声やセリフ回しは『終わりのセラフ』の柊シノア(cv. 早見沙織)を参考に。
最初の起点となったキャラでした。名前自体は中学の頃から何かのキャラに使っています。日の目を見て良かったです。
〇ユーリス・アステリス
メイド。銀髪オデコ。八重歯、にししと笑う。
声やセリフ回しは『クロスアンジュ』のモモカ・荻野目(cv. 上坂すみれ)を参考に。
モデルはだいたい古畑任三郎の今泉君。なんかこうやらかす感じをいま風に「ワンコ的にちょっと迷惑な感じ」に仕立て直しました。
〇イリーナ・ユスフ
大金持ち。ふくよか。ちょっとのんびり。よくファルラを抱きしめる。背景に花が散るようににっこりと笑う。
モデルはロシアの女装する大貴族、フェリックス・ユスポフ。
声やセリフ回しは『ノーゲーム・ノーライフ』のフィール・ニルヴァレン(cv. 能登麻美子)を参考に。
長編化に向けて、話をごり押しできるキャラとして誕生させました。お金の力で何でも解決するぜ、というキャラだったのに、なぜかファルラに恋心を抱き、ユーリスとは複雑な関係になってしまいました。最後のほうで男装してファルラと一緒に逃げようとしたのは、当初からの予定でした。
〇ベッポ・アリスターナ
女優。看板スター。実は男の娘。そして諜報もしている。ファルラからひどいことをよくお願いされる。愚痴を言いつつ、自分の犯罪を見逃してもらったファルラを助ける。
モデルはアニメ『巌窟王』のベッホ。役柄的には『ジャイアントロボ』の村雨さん。
声やセリフ回しは『よふかしのうた』の鶯アンコ(cv. 沢城みゆき)を参考に。
こちらも長編化に際して、風車の弥七的に裏でファルラ達を助けるキャラとして誕生しました。最後はイリーナといっしょに「ファルラ被害者の会」を結成してお幸せにと願いつつ。
〇ジョシュア・ディア・アシュワード
アシュワード王家第二王子。ファルラの元婚約者。人の気持ちを理解しないまま、責任を果たそうとする迷惑な存在。だからファルラのことも切り捨てられた。兄ハロルド王子の死亡を隠蔽。殺害の罪を悪役令嬢にかぶせようと婚約を破棄した。
モデルはリアルな知り合い。声は宮野真守さんのイメージ。
〇セイリス・ディア・アシュワード
アシュワード王家第三王子。異母兄弟。母譲りのきれいな黒髪が特徴。母は月皇教会の聖女だったせいで、そちらに縁がある。やさしすぎて、争ったり、意見が言えず、祈ることに逃げてしまう。
モデルはリアルな知り合い。声は『魔法騎士レイアース』のザガート(cv. 小杉十郎太)のイメージ。
〇ミルシェ・ディア・アシュワード
アシュワード王家第四王子。かわいい系ショタ。寂しくなると気を引こうと悪いことをしてしまう。
モデルはリアルな知り合い。声は『桜蘭高校ホスト部』のハニー先輩(cv. 千葉雄大)のイメージ。
〇ロマード・ルーン・アシュワード
王様。王子たちの父親。自分が好きなことをやる、ファルラにちょっと似た困った人。宰相と仲良し。子供思いなところはある。
声のイメージは麦人さん。
〇アーシェリ・コルネイユ
町娘。実家は城下のパン屋。魔法学園にいたとき、ジョシュアの寵愛を受ける。最初はジョシュアを失う恐れから内通していた魔族に頼っていたが、王家に入ってからは妃としての威厳に目覚めたもよう。生きていればジョシュアを尻に敷きながら国政で活躍したはず。
モデルは悪役令嬢物に出てくる典型的な感じにしたのですけど、しいて言えば『アンジェリーク』のアンジェリーク・リモージュ(cv. 白鳥由里)かな……。
〇ミハエル・グリシャム
生徒会長。その裏で男娼をしていた。太客はハロルドだったけれど、愛していたのは身近に親友として接していたジョシュアだったというかわいそうな人。
こちらもモデルは悪役令嬢物に出てくる典型的な生徒会長な感じにしたのですけど、しいて言えば『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』のシリウス・ディーク(cv. 増田俊樹)かな……。
〇エレノア・コーデリア
魔法学園先生。褐色長髪。ファルラの恩師。でも実際は軍から圧迫を受けた状況下で、無謀な実験の末、同僚であるファルラの母に責任を引き取らせ、自身の身を魔族に渡した人。だからファルラのことを複雑に思いながら、生徒として育て上げた。
モデルは『宇宙英雄物語』のゾハル(cv. 佐久間レイ)。
第一話ではファルラへ大けがを負わせて、どさくさのなかで連れ去り、魔族領に逃げようとしていたらしいです。ユーリス達が攻撃を防ぎ切ったことで諦め、今後の策を牢のなかで考えていたところ、このままでは自身の延命が難しいと考え、魔法学園を焚き付けて、公判記録という形で思い出を残すことになりました。
あんまり意識していなかったのですけど、たしかにハリーポッターのスネイプ先生ぽいですね。ご指摘ありがとうございます。嬉しいです。
〇オルドマン衛士長
衛士長であり元空挺部隊の軍曹。体格いい正義の男。ファルラにされるひどいことを一身に受ける人。レストレード警部役として登場したけれど、彼が活躍する話を話数の関係で割愛され、その意味でもかわいそうな人。
モデルはとくになく、しいて言えば『ビブリア古書堂の事件手帖』の五浦大輔。
〇ヨハンナ・コルネイユ
パン屋のおかみさん。軒先に捨てられていたアーシェリを育てる。正体は戦うのが嫌になって逃げだした本物の勇者。
逃げ出し勇者は、拙作の別小説のキャラから拾ってきたものになります。いつか逃げ出し勇者の旅物語を書きたいと願いつつ。
モデルはとくになく。しいていえば『フタコイオルタナティブ』の肉屋、杉作のおばちゃん(cv.中西裕美子)。
〇勇者メルルクと副官ネネ・アルサルーナ
偽物勇者。本物の勇者がいなくなったので急遽育てられた勇者のひとり。メルルクは基本ふてくされている。ネネはメルルクのことを気遣っている。
ふたりは、拙作の別小説のキャラから拾ってきたもの。プロットだけはカクヨムに置いてあります。
声のイメージは物語シリーズのファイアーシスターズがシリアスになった感じ。
〇ギュネス・メイ
高位魔族。長い黒髪、赤い瞳、垂れ目。指をはじいて現実を否定することで能力を発揮する。メスだかオスだかわからない。
イメージのモデルは『ARIEL』のニコラス・フィーラー。それがもうちょっと育ったら的な解釈で作成。否定能力はデビッド・プリンの知性化シリーズに出てくるタンデューという種族から。それに『Re:CREATORS』の築城院真鍳ぽい人を食った感じ、『蒼き流星SPTレイズナー』のゴステロ並みのしつこさを合わせて作ったり。
声は伊瀬茉莉也さんや渕崎ゆり子さんの少年声のイメージ。
これも拙作の別小説のキャラから拾ってきたものになります。かなり好きな悪役です。いろいろ現実を否定して欲しいです。
〇ルドラ・グリフィン
ファルラ達の魔法学園の先輩。12年生とも言われ、いつでもいるといううわさがある。正体は形を変えた吸血鬼であり、元々の魔王であって現在は大公と呼ばれる。アルザシェーラを魔王に仕立てた張本人。自称魔法学園のおしゃれ番長。女性はドレス姿が基本なこの世界で、乗馬パンツにジャケットを負担着にしている。黒い丸眼鏡をかけ、いつも何かをちゅうちゅう吸ってる。
モデルはリアルな知り合い。声は硬軟できる日笠陽子さんのイメージ。
ある方のイラストを見て、「これだっ」となり、急遽登場させたキャラです。このまま魔王がファルラを助けるのはなんかちょっと違うな……と思い、権力が二重になっている状況にしたくて出しました。
〇クレベル・アルザシェーラ
魔王様。白いワンピース姿をした少女の格好をしている。1000年前から生きていて、他の魔族とは違う人の体を持つ。経緯的に従わない魔族も多く、高位魔族は魔王派、大公派に分かれているが、大公が魔王派なので、魔族は全員魔王にひざまづいている。
声は少年声に近い坂本真綾さん。
『スレイヤーズ』のフィブリゾがすごく衝撃的で、いつか形にしたかったキャラです。白いワンピースを着た少女が夏空の下を海岸沿いや田舎街を歩く絵面は、たいへんよくあるものですが、それがもし悪魔的なものだとしたら……という感じで作りました。
〇ギルファ・ファランドール
ファルラのお母さん。頭良すぎてハブられるなか、同じように天才的なコーデリア先生と仲良くなる。絶望的な状況から手を差し述べられたことで、コーデリア先生のことを絶対視してしまい、それからはコーデリア先生のために生きることを決意した。のんびりしているけれど、中身は使命感が強いマッドサイエンティスト。
声のイメージは母親役をしている能登麻美子さん。
雰囲気的なところをあえてイリーナとイメージを重ねてみました。ファルラの理想のお母さんがイリーナみたいな。もうファルラはユーリスという支えがあったので、イリーナ離れができました。
忙しい母を持つ子供というのは、いろいろと思ってしまうところがあり、そうした子供の方から見た視点で作ったキャラになります。「仕事に行かないで」と泣く子供からどんなふうに親は見えているのか、みたいな。
〇魔法学園の先生たち
だいたい『ジャイアントロボ』の十傑集です。あと『闇の司法官ジャッジ』の十王裁判をさせたくて。その後いろいろ活躍したので、数を出して良かったなあと、作者心に思う人たちでした。
学園長アドラス・グリュフォールのモデルは岡村靖幸。声は神谷浩史さん。
教頭顧問ディアドナ・ハルマーンのモデルは『ブラックラグーン』のCIA版エダ。
武闘術先生ゲルハルト・ミュラーのモデルは、『ガンダム0083』のガトー。
軍略学先生マクナビス・ドーンハルトのモデルは、『ドリフターズ』のカルタゴの雷光ハンニバル。
占術学先生フロリア・クリュオールのモデルは曽我町子さん。
魔学先生サイラス・サイモンのモデルは『ロードス島戦記』のスレイン・スターシーカー。
医術先生ファウド・ゼルシュナーのモデルは平沢進さん。
■各話紹介
〇第1話 悪役令嬢は名探偵編
「当店のシグネチャはこちらでございます」みたいなお話しです。ミステリーにある不審な点→捜査→答え合わせの定石を持って来なかったのは、やっぱり曲で言うところのサビを頭に持ってきたかったためです。そのためいきなり婚約破棄で推理ショーとなりました。
あれこれ推理を披露するけれど、だいたい嘘で、全部はユーリスのため、という形はここでもう固まっているかなと思います。
離宮のモデルはエカテリーナ宮殿です。いつか琥珀の間に行ってみたいです……。
〇第2話 出奔する悪役令嬢編
敵と世界観と居場所を提示する的なお話し。中庭がきれいな家というのはフランス的イメージ。パン窯が共同で使われているのは、薪の節約のためです。みたいな小ネタがいろいろあったり。
〇第3話 王国劇場の女優編
女優ベッポさん登場回。
長編化に際して一番最初に考えた作品です。認識阻害というファンタジー作品によくあるものでトリックを作れないかなと思ってこうしてみました。話的には古畑任三郎の「動く死体」をベースにしています。この回で途中まで見ていた劇が、最後ファルラによって実際に演じられるのは意図して書きました。
〇第4話 監獄の恩師編
いわゆる『羊たちの沈黙』みたいな監獄をテーマにしたミステリーを考えていて、この世界での魔法を使った犯罪者はどうなるんだ……というあたりからこうなったものです。恩師と名探偵の対決はいいものだなって思います。
〇第5話 学園裁判編
法廷ミステリー大好きっ子の私が、ファンタジー世界でなんとかやれないものだろうかと考えて作ったものです。ネタは古畑任三郎の『しゃべりすぎた男』が下敷きです。もっと短くできるかと思ったけれど、できませんでした。ごめんなさい。
〇第6話 生徒失踪編
第5話が長すぎて、途中で別けて、トリックも加えて事件に仕立てたもの。ミミックが棺桶でしたネタと、先輩の正体が明かされるシーンは大好きです。
〇第7話 グレルサブの黒犬編
ある漫画家さんは、いつ打ち切られてもよいように話を作る、というあたりで、ネタバレ回をここに持ってきました。三幕構成で言えばちょうど真ん中になります。
元ネタは私がホームズシリーズで最初に読んで一番好きになった『バスカヴィルの魔犬』から。風景的なところも少しお借りしました。ヒースと呼ばれる低木やコケに小さな赤い実がついているのはとても良い景色です。
人造神様ネタは当初からになります。いつか人間は物理的に神様を作ると思うんです。イメージ的には『忘念のザムド』の敵の皇帝陛下から。現在と過去が混ざる構成は『輪るピングドラム』、『lain』から。ちょっと好きなのですけど、小説だとなかなか大変です。これを見越して見出しに日付と場所を入れる方法にしていました。
〇第8話 欲望の空中戦艦編
いわゆるミステリの豪華客船ものをこの世界でやったらどうなるのか、みたいなお話しです。魔法が発達し科学がいびつに育った世界観の解説もついでに。
空中戦艦大好きです。『天空の城ラピュタ』や『ラストエグザイル』、最近だと『プリンセスプリンシパル』で大喜びしていました。
実質密室になる場所でのトリック的は私があれこれ考えたものですけど、ちょっと強引でしたかね……。ダブルバインドネタが大好きなので、こうしちゃいました。
〇第9話 苦くて青い紅玉編
ミルシェ殿下回。ホームズの名作短編『青い紅玉』をファンタジー世界でやったらどうなるだろうか、ということに挑戦しました。ミルシェ殿下と雪で遊ぶシーンは大好きです。ユーリスは意外と正義感の強い人です。それは魔族の世界で悪人退治をしていたせいもあります。
〇第10話 教会のしもべ編
セイリス殿下回。今度はこの世界での宗教のお話しです。そして真の敵は何か、みたいな。グラハムシュアー大聖堂のモデルはカンタベリー大聖堂です。あの地下に何かがある、というのはちょっとわくわくしちゃいます。
百合の結婚はちょっと思うところがあり、こんな感じにしました。因習に囚われたジョシュアたちの結婚式、一方でファルラたちの異世界での結婚式。これはいまの同性婚の図式をそのまま当てはめたつもりです。同性婚が異性婚と変わらずできる世の中になりますようにと私はいつも願っています。
〇第11話 紅蓮の王都編
ここから先は最後に向かって怒涛のように流れていきます。テーマ的には東京大空襲です。火災旋風はすさまじかったと祖母から聞いています。火を吐く魔物がいたら、こうやって街を焼くのに使われるだろうなと思って、こうしてみました。
戦闘シーンは『僕のヒーローアカデミア』のBGMをかけまくって作っていました。作曲された林ゆうきさんは至宝です。
最後の雨の中で茫然とファルラが泣くシーンは当初からの予定でした。BGMは新居昭乃さんの「ガレキの楽園」をぜひ。蒼桐さんからは「Tajaさんの「NO LIMIT」とか「時空のたもと」とか「夢轍」と無茶苦茶合います(『MS IGLOO』の主題歌)」とのことでした。こちらもなかなか。
〇第12話 王の終焉編
ネタ的にはホームズの『ノーウッドの建築業者』ネタをファンタジー世界でどうするのかという話でした。天井見なくてごめんなさい。水で流してしまいました。
王様がこうなっているのも当初からの予定でした。アシュワード王家をずっと見守っている魔王アルザシェーラはどう思っているのでしょうね。
〇第13話 最後の事件編
煮え切れず踊る会議に招かれたファルラ……というのは当初からの予定でした。実に嫌ですね。ファルラが微妙に思うのもわかります。
人工神様どかーん、勇者の剣じゃらじゃらー、というのは最初から、列車砲ばーんは、13話書き始めているうちに、このまま空中戦艦で攻撃しても飛距離が足らない……というあたりで急遽引っ張り出してきました。
というわけでファルラは、最後の事件として世界の秘密を解き明かしました。ゲーム開発はひどいですね(笑)。
SF的にしてしまったのはあまり意図しなくて。13話をまとめるに辺り、いろいろなことに理屈を付けたかったので、こうしてしまいました。これで「ゴブリンが誕生するための進化系統」なんか考えずにぐっすりと寝られます。
〇第14話 別れの挨拶編
『天鏡のアルデラミン』という作品が大好きで、本作でもその片鱗がちょこちょこ出ている気はします。牢から処刑の流れは、この作品の終わりのあたりのイメージがあります。そして、それぞれが未来を示唆されながら退場していくという流れも、似ているかもしれません。大好きだから仕方なし。
ここで示唆していた劇の続きがこの作品の締めに出来ました。「ざまあみろ」は悩みながらも『宇宙よりも遠い場所』と同じセリフにしました。ばかやろうだと違うしな……と散々悩みながら、結局……。まあ、実際すっとします。
結局ユーリスは死ぬしか運命が無かったのですが、魔族領へ行って少しだけ生を伸ばせたおかげで、ファルラは、死にたがる自分からある程度決別できました。ユーリスもようやくファルラのそばに自分がいて良かったと思えるようになりました。
やっぱり死ぬ間際にならないと人ってわからないもんだなあと、自分の経験を込めてみました。
読み終わった後は新居昭乃さんの「懐かしい海」という曲をぜひ。泣きます。実証済み。
〇エピローグ
蒼桐さんと話していて、この世界の未来はどうなるのだろう? というところからプロットを起こしたものになります。本来は14話の最後で止めるつもりでした。
この頃、魔族側は月への侵略を本格活動していて、人知れずばんばんロケットを打ち上げています。たぶんマスドライバー方式かなと。
人の世界は疲弊しきっていますが、教国側とイリーナたちが冷戦しながら技術革新をしていくように思います。
結局ジョシュアは世界から取り残され、その代償をファルラと同じように背負うことになりました。ファルラなら「やはりアレの方はアレな最後でしたね」と一言で切り捨てることでしょう。
■執筆時のBGM
・『薬師寺涼子の事件簿』サウンドトラック
・『桜子さんの下には死体が埋まっている』サウンドトラック
・『プリンセスプリンパル』サウンドトラック
・『ACCA13区監察課』サウンドトラック
・『七つの大罪』サウンドトラック
・『僕のヒーローアカデミア』サウンドトラック
・『輪るピングドラム』サウンドトラック
・水樹奈々「禁断のレジスタンス」
・水樹奈々「inocent starter」
・林ゆうき & Ayasa「Awaking」
・Ayasa「君と僕と青い月」
・ヨルシカ「昼鳶」
・Void_Chords「Beyond Sleves」
・女王蜂「MYSTERIOUS」
・SUIREN「アオイナツ」
・種ともこ「Broken Wings」
・新居昭乃「サリーのビー玉」
・新居昭乃「蜜の夜明け」
・新居昭乃「羽はツバメ」
・新居昭乃「WANNA BE AN ANGEL」
・新居昭乃「ガレキの楽園」
・新居昭乃「懐かしい宇宙」
私は音を聞かないと書けません。ノリノリにならないと筆がノリません。素晴らしい曲を作られた方々に感謝いたします。
■今後に向けて
本編が長すぎるので削ったり、外伝のために用意するだけしてそのままになったプロットがいくつもありまして……。
・ディオゲネスクラブをテーマに聞き取りできない状況でファルラが推理する事件。
・闘技場で次の相手が殺される事件。時間内にどうやって殺人を犯したのか。
・目の代わりに魔法で外界を見ている北方の種族のお姫様を、衛士長にお願いされて預かる事件。
・ダンジョンから帰ってきたパーティで、仲間のひとりが死んだと言い張る事件。ギルドから依頼されて、聞き取りだけで事件を暴く
・因習が残る村にたまたま流れ着いたファルラとユーリスが、村ぐるみの犯罪を暴く事件。
・魔族領に行ったふたりが、お互いを慈しみながら魔族達の問題を解決していく話
……とかとかいろいろあります。そしてファルラとユーリスのイチャラブも。
いつかどこかでまた外伝という形で短編として書けたらと思います。
また良いものを書いてまいります。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
名探偵悪役令嬢 ―我、婚約破棄の場で華麗なる推理を堂々と披露せんとす― 冬寂ましろ @toujakumasiro
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