類稀なる文才による淡い色彩に彩られた本物のファンタジー

『言葉だけでこんな鮮やかな世界を描き出すことができるんだ』

私がこの作品を拝読して、初めて感じたことです。
自分の作品とのレベルの違いに心底凹むことは多々あるのですが、そういう次元でなく、比較するのもおこがましいと感じた作品がいくつかあります。
この作品がそのひとつです。

どんなに素晴らしい感動的な物語であっても、それを広げることができる世界・設定が構築されていなければ、その良さは読者には伝わりません。
そして、どんなにご立派な世界・設定を構築しても、それを描き出せる力がなければ、やはりその良さは読者には伝わりません。

作者の矢口先生は、類稀なる文才により、その物語・世界観を見事なまでに描き切ります。そしてその表現力は、登場人物たちと一緒に空を飛ぶ感覚を得ることができる程です。
それは大げさではなく、多くの絶讃レビューや星の数が私の言葉の証左と言えます。

テンプレ設定の異世界ファンタジーものも良いでしょう。
しかし、自身の頭の中で描き出した独自の世界こそが『ファンタジー』だと思うのです。
そして、それを言葉の力で描き出せるのが『作家』さんなのだと思います。
(テンプレ設定の異世界ファンタジーものを否定するわけではございません!)

まずは、序章・第一章をお読みいただき、その世界を体感してください。
ファンタジーがお好きな方であれば、きっとご満足いただけることでしょう。

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