第4話 王太子との初対面
「そのお方はこちらでお待ちだよ」
父に連れて来られた場所はこの屋敷でも特別なお客様の時に用意されるサンルームだった。この部屋は美しい園庭が見える場所に作られている為、窓からはバロー家自慢の園庭が良く映えている。
「おお、その子がかの有名なバロー家の才女であるアリーナだな?」
窓際の大きな楕円形テーブルの椅子から立ちがったのはいかにも高位貴族と思われる服を着た男性と‥…じっと椅子に座ってこちらを見つめる男の子がいた。
男の子は私と同じ位の年齢かもしれない。栗毛色の髪に、ダークブルーの瞳のとても可愛らしい顔立ちをしている。
「さぁ、アリーナ。お客様にご挨拶なさい」
父は私を床の上に下ろした。
「はい、お父様」
返事をすると、ワンピースドレスの裾を少しつまむと挨拶をした。
「初めまして。アリーナ・バローと申します」
「何と可愛らしい…しかもとてもかしこそうな目をしておる…流石はまだ5歳ながら才女と言われるだけのことはある。私の名はテオドア・オルタートと申す。この国の国王を務めさせてもらっているのだよ?そしてあそこに座っているのがアルフォンソ。私の息子だ。実は今回、アリーナを訪ねたのは、将来アルフォンソのお嫁さんになってもらえないかと思って君に会いにやってきたんだよ?」
ニコニコと笑みを浮かべながら自己紹介をしてくるものだから、危うく聞き逃すとこだった。
「左様でございますか…国王様でいらっしゃるのですね…え?こ、こ、国王…?!」
私はあまりのことに固まってしまった。
「おおっ!見たか妻よっ!アリーナが初めて動揺している姿を見たぞ!」
「ええ、見ましたわ、あなた!やはりあの子も人の子だったのですねっ?!」
何処か能天気な両親は国王が自分の息子の妻にしたいと私を訪ねてきたことよりも娘が動揺したことの方が事件のようだ。
「どうだね?君は天使のように愛らしい姿をしているし、おまけにこの国一番の才女とまで言われている。どうか我が息子…王太子のアルフォンソを宜しく頼むよ」
「そ、それは…」
どうしてだろう?何故か分からないけれど、私の中で警鐘が鳴っている。絶対に王太子と関わっては駄目だと本能が叫んでいるのだ。あの少年は私にとって危険な存在だと…。
「私としてはアリーナ以上に息子の花嫁になるのにふさわしい相手はいないとおもっているのだよ君の両親からはもう許可は頂いているのだよ。アルフォンソはアリーナと婚約しても構わないと言っているのだが…」
国王がよりにもよって5歳児の幼女に自分の息子との婚約を迫ってくるとは…!
そして私の出した答えは…。
「絶対にいやですっ!お断りいたしますっ!」
気付けば無意識のうちに心の底から叫んでいた―。
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