第13話 悪役令嬢とヒロイン
「ねぇ、ところでノエル。貴女、何故あんな木の上にいたのよ?」
2人で校舎へ向って歩きながら隣を歩くノエルに尋ねた。
「それはね、いつも貴女がお昼休みにコソコソとまるで逃げるようにいなくなるものだから、後を付けてみたのよ。そしたらあの木の下でランチを食べ始めたから最初は驚いたわ。その後も毎日貴女の後を付けてみれば丘に登って1人でランチを食べているじゃない?だから先回りしてあの木の上に登って待ち伏せすることにしたのよ」
ノエルは得意そうに言ってのけた。
「でも、何故わざわざ木の上に登っていたのよ?」
「そんなの決まっているじゃない。貴女は1人が好きなのかと思っていたからよ。正面から近付いていったら逃げられるんじゃないかと思ったから、木の上で待ち伏せしていたのよ。そしたら『いただきます』なんて言うんだもの。ほんとにびっくりしたわよ。まさか悪役令嬢のアリーナ・バローが私と同じ転生者だなんて誰も思わないじゃない?」
悪役令嬢…その言葉はいただけない。
「ねぇ、その悪役令嬢って単語使わないでくれる?私、貴女に何一つ悪いことしてないじゃない。それより同じ転生者なんだから仲良くしましょうよ?」
「ええっ?!本気で言ってるの?!私はヒロインで貴女はこの話の悪役令嬢なのよ?どこの世界に悪役令嬢と親しいヒロインがいるのよ?」
ノエルは呆れたように私を見る。
「ねぇノエル。確かこのゲームのヒロイン…勉強はあまり得意じゃ無かったわよね?」
「うっ」
ノエルが困った表情を浮かべる。
「私の成績は知ってるでしょう?」
「ううっ!」
「苦手な勉強…教えてあげてもいいわよ?」
「そ、それは…あ!ちょっと待ってっ!」
不意にノエルは声を上げた。
「何?」
「確か、アルフォンソ様は勉強が得意だったわよね?」
「ええ、次席だけどね」
だって私が首席なのだから。
「だったら遠慮しておくわ。だってアルフォンソ様と恋人同士になれたら彼に勉強を教えてもらえるじゃない。あいにくだけど貴女からの友達申請は却下させてもらうわ」
「あ〜…そうですか…。まぁ別にいいけどね」
私としてはアルフォンソ王子と仮婚約の関係が無くなるだけでも嬉しいのだからこの際、ノエルと友人関係になるのは諦めよう。
「あ〜楽しみ…早くアルフォンソ様とお話がしたいわ…」
両手を組んでうっとりした顔つきのノエルは流石ヒロイン。とても愛らしく見える。
「大丈夫、貴女は可愛いから…きっとアルフォンソ王子はノエルを気にいると思うわ」
「本当?本当にそう思う?」
ノエルが嬉しそうに笑った。
「ええ、思うわ。でも…一応、ノエルをアルフォンソ王子に紹介はするけれど、後は自力でなんとかしてよ?私はあの方に何かお願い出来るほど、親しい間柄じゃないのだから」
まぁ、ゲーム通りならアルフォンソ王子は一目で愛らしいノエルを気に入ってしまうのだから、何も問題は無いだろう。
うん、私から何かアクションを起こさずとも…きっと2人は運命の相手同士なのだから一瞬で恋に落ちるはず。
そうすれば、アルフォンソ王子だって私と仮婚約の関係を終わらせたいと思うはず。そして私は晴れて自由の身となれるのだ。
今後のことを想像すると、嬉しくてニヤケが止まらない。
すると…。
「ちょっと…さっきから何ニヤニヤしてるのよ。気色悪い…」
ノエルが引き気味に私を見ている。
「あ、ごめんなさい。これからノエルとアルフォンソ王子を会わせた後の展開を想像すると嬉しくてついね…」
「何よ…調子が狂うわね。ヒロインの恋を応援する悪役令嬢なんて前代未聞よ」
「だから、私は悪役令嬢じゃないってば」
こんな風に私とノエルの会話は弾み…?気づけば、私達は学食の前に立っていた。
「さぁ、学食に着いたわ。アルフォンソ王子はいるかしら…」
「ええ…そうね…」
「それじゃ、入るわよ?」
「分かったわ!」
私達は互いに頷きあうと…2人で一緒に学食へと足を踏み入れた―。
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