第21話 悪役令嬢と一家団らん

「お父様、お母様、ついでにお兄様」


家族揃っての夕食の席で私はグルリと3人を見渡した。


「何だね?アリーナ」

「どうかしたの?」

「つ、ついでって…」


食事をしていた3人の視線が一斉に私に注がれる。


「はい、聞いて喜んで下さい。ついに私、念願だったアルフォンソ王子との仮婚約の関係を解消出来そうなのです」


「何だって?」

「まぁ…」

「ついにかっ?!」


「はい、実はアルフォンソ王子は明日私が紹介した女性とデートをすることになっています。そこで2人は本格的に恋に落ちて、晴れて私はアルフォンソ王子との仮婚約の関係を終わらせることが出来る予定なのです」


「「「え…?」」」


すると何故か両親も兄も目を見開いて、驚きの様子で私を見つめている。


「あの…どうかしましたか?」


「ア、アリーナ…今の話は本当なのか?」

「貴女が紹介したの?」

「お前がデートのお膳立てをしたのかっ?!」


「はい、何か変でしょうか?」


そしてフォークに刺したままだったお肉料理をパクリと口に入れた。うん、美味しい。


「な、なんて酷い話なのだ…勝手に婚約者の話を持ちかけておきながら…」


「ええ、アリーナの紹介で堂々とデートするなんて」


「どうせ無理やり王子に女性を紹介するように命令されたのだろう?許せないぞっ!俺の大事な妹を脅迫するなんて…!」


妹思い?の兄は首に付けていたナフキンをむしり取った。どうやら兄は勝手に妄想しているようだが紹介したのは私の方で、むしろ王子は巻き込まれただけなのだが…説明すると面倒くさい事になりそうだったので、ここは黙っていることにした。


「よし!アリーナッ!明日はアルフォンソ王子と、お前が紹介した女性のデートの様子を尾行するぞっ!」


「はぁ…別にいいですけどね…」


本当は家でゴロゴロしていたかったけど、一応デートのセッティングをした私としては2人の様子を見届ける義務はあるかもしれない。


「まぁ、それは面白そう…いえ、大変そうね。2人で後をつけるより、3人で後をつけたほうが良いのではないかしら?その方が見失わずに済みそうじゃない?」


母は目をキラキラさせながら私と兄を交互に見る。

…明らかに興味本位で申し出ているのは山々だ。


しかし…。


「お母様、あまり人数が多いと尾行がばれてしまいます。なのでここは私とお兄様の2人きりでさせて下さい」


「そうなの?仕方ないわね…」


明らかに残念そうな母。


「なんだ。私も仲間に入れてもらいたかったのに…」


なんと!父までもが尾行に参加?したかったとは…。


「お父様もどうぞ遠慮なさって下さい」


こうして、明日は急遽兄と一緒にアルフォンソ王子とノエルのデートを尾行することが決定した―。

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