徽章術なる魔術をあつかう章術士の少女エステル。彼女の仲間の少女ルリーテ。そのエステルが何者なのか、ということが簡潔に描写されたプロローグによって、本作は幕をあけます。
プロローグは2話にわかれており、もう片方のプロローグでは青年セキについて語られています。
エステルとセキ。プロローグを読めばわかるのですが、このふたりは十年前に出会っています。そのときに、一緒に冒険をするなら仲間になるという約束をして、それを果たそうとすることで物語が動きはじめます。
そして、その物語ですが、非常によく世界観や設定が作りこまれており、冒頭から濃密なファンタジーの世界に入りこめます。
「中央大陸(ミンドール)」や「自然魔力(ナトラ)」「下位風魔術(カルス)」「下位火魔術(ヒルス)」などの作中に出てくる用語が、そうした世界観の構成の一助にもなっているのですが、個人的にすごいなと思わされたのが、これら用語に打たれたルビ(ふりがな)のネーミングのセンスのよさのみならず、ルビの意味がわからなくても、ルビをふられた漢字のほうを読めば、おおよその意味がつかめるようになっている親切設計です。
このレビューは1章まで読んだ時点で書いているのですが、同章ではエステルとルリーテがオカリナという村でクエストをこなしていきます。そこで展開される魅力的なストーリーと、仲間になる個性的な人物たち。
おそらくカクヨムに掲載されている小説のなかにあって、本作は一話におけるボリュームが多いほうの作品だと思いますが、内容が面白いので、ぼくの場合は苦もなく読み通せました。
すでに書いたとおり、このレビューは1章を最後まで読んだ時点でのレビューです。2章以降、この物語がどうなるのか、エステルとセキはふたたび出会えるのか、出会ったとしたら、どうなるのか、いまからとても楽しみです!
『パレット探求記』、おすすめです!!
あらずじ…五つの大陸からなる世界「ストラディア」が舞台です。この世界では魔獣と呼ばれるモンスターや契約することでより強力な力を得ることができる精霊が存在します。東大陸から中央大陸にやってきた美少女エステルは、バディの少女ルリーテともに、かつて命をかけて自分を救ってくれた父親と父親の手紙を届けてくれた少年セキのいる南大陸を目指します。
おすすめポイント①…ハードかつややダークな世界観に可愛らしい美少女の組み合わせが絶妙。この世界で「探求士」と呼ばれる冒険者の2人が魔獣と戦いますが、レベル上げ対象の雑魚モンスターなんか存在しません。最初から全力で戦っても常に死と隣り合わせの緊迫感があります。魔獣が植物や昆虫の特性をフルに発揮しており正直こわいです。美少女ふたりにはキツいのではといつもドキドキするでしょう。
おすすめポイント②…オシャレかつオリジナリティーあふれる文章。魔術、モンスター、設定の全部がオシャレです。そもそも冒険者ではなく、「探求士」なんです。南大陸は「バルバドス」なんです。読み進めると超美麗なイラストが脳内で見えてくるでしょう。
少年セキと出会う前までのレビューとなりますので、ここにボーイミーツガール要素がプラスされさらに盛り上がることでしょう。オススメです!!!
第一に感じるのが、作品と読者に対する作者様の真摯さです。
改行、余白のバランス、ルビのつけ方など、ページ全体の美しさに気を遣われているのがわかります。
文章ももちろん読みやすく、設定がしっかりしているので安心して読み進められます。
異世界ファンタジーなので世界観の説明は多いですが、一度にまとめて書いてしまって読者を退屈させるようなことはありません。愛らしいキャラクター同士の会話を挟んで小出しにすることで、読者をすんなり世界観に引き込むことに成功しています。
また展開も先を急いであらすじ的になってしまうことなく、読者と一緒に一歩一歩進んでいく感じです。
昨今多いカジュアルな異世界ファンタジーではなく、昔図書室で読んだ児童書のような、作品自体に穏やかな雰囲気を備えたファンタジーです。
美しい。
まず、タグに「ハイファンタジー」とあるように、かなりガッツリと独自の世界観が練られた硬派な作品である事を伝えておきます。
迫力のある戦闘、「チート」という救済のない過酷な戦い、エステルとルリーテ、二人の少女の行く道はあまりにも険しくハードです。それでも各登場人物達が自らの目的の為に進んで行く姿は、凛々しくカッコいい!!!
そしてこの作品、何と言っても技などのルビが美しい……!!文字を見ているだけで一つの芸術の様にも感じられます。いやぁ、センスが素晴らしい!!(*´∇`*)
なお1話1話に重量感があり、尚且つこの作品内の専門用語が多いので、じっくり読む事をオススメします。
1章読了時点のレビューとなります。
かつて約束を交わした少年との再会を夢見て。これは、相棒の少女ルリーテと共に「探求士」として南大陸を目指す少女エステルの冒険と成長の物語です。
――と、要約すればこのようになるかと思うのですが、私が本作から感じた魅力は彼女達やその周囲を取り巻く人々、のみならず、本作の作中世界「ストラディア」、その存在をくっきりとこちらの脳裏へ描き出された世界そのものです。
主人公が「今」「そこに」いる舞台だけでなく、その外に広がるとてもとても広い世界を同時に感じさせてくれます。こう要約してしまうと陳腐に聞こえるかもしれませんが、「世界の広さ」を感じられる物語ってなかなかないと思うのです。そうした意味で、私にとって本作は魅力的でした。
異世界。そう、そこは異世界なのです。
そこに世界があって、人がいて、旅をしたり街を作ったりそれぞれの営みがあって、そんな世界へ主人公や作中人物の活躍を通して触れてゆくという異世界ファンタジーの楽しみ! エステルたちが「そこ」で生きているのだという物語の感覚ですね。
呪文や名称のセンスも大変垢ぬけていて、「今、ここでない別の世界」を芳醇に感じさせる洒脱なセンスでたまらなくよいのです。
多分にふわっとしたレビューとなりましたが、大変魅力的なファンタジー作品です。
王道異世界ファンタジーが欲しい方、かわいい女の子――少年少女、という方が正確なのかもしれませんが――が活躍する物語が好きな方、是非一読してみてほしいです。
おすすめ。
主人公たちが、一から築き上げ、少しずつ成り上がっていく冒険者の物語。
文章自体が読みやすく、また独自の世界観を構築するに当たって、ルビと単語のひと組み合わせで分かり易く表現されています。
どういう魔法か、単語だけで読んでそれとなく分かり、そして読み方で雰囲気を盛り上げる工夫があるんですね。
才能はあってもチートと呼べるものはなく、それが好ましく思える人には、主人公たちに愛着を持ち、そして見守っていきたいと思える事でしょう。
多くの難敵に対し、どう対処するのかも見ものです。
そして各キャラクターが持つ目標に向かって、ひたむきに努力しようと思う姿勢には、応援したくなる魅力があります。
流行りの転生ものに食傷気味であったら、是非読んでみて欲しい一作です。
『異世界』ファンタジーというジャンルが、本来どういった物だったかを思い出させてくれる良作です。
皆様は最近のテンプレ異世界物をどう感じてらっしゃるでしょうか? 重視されるのは主人公の持つスキルの奇抜さや、どう気持ち良く成り上がるかばかり。
物語の舞台となる“異世界”は『ナーロッパ』などと揶揄される程に軽視され、ともすれば細々と世界観の説明をするのは悪手だとまで言われています。
しかし異世界ファンタジーの本来の魅力とは、非現実的な世界で出会う様々な風景やイベントなど、あたかもその世界を旅しているような満足感にこそあるのではないでしょうか(個人的な趣向)
この物語の真の主役は「ストラディア」という世界そのものだといえます。
序章で長々と世界観の説明が書かれている訳ではなく、主人公達と共に旅をしていくうちにそこがどんな世界であり、どういった文化が根付いているかを自然と肌で感じられる。それ程までに丁寧な描写がなされています。
“旅好き”の読者様に是非読んで頂きたい物語です。
不思議だった。
何故、この小説はこうもありありと情景が浮かぶのだろうか?
最初に断っておくが、この壮大な探求記は、誰が読もうと間違いなく傑作である。
重厚に作り込まれた世界観、魅惑的なキャラ達、圧倒的な構成力は、私などが語る必要はない。ちょ、ちょっと、自信失くすから! と書き手でもある私を動揺させ嫉妬させる素晴らしい傑作だ。
だが、それだけではない。
そっと差し込まれた語り手のユニークな視点での表現、これは多くの書き手がやりすぎて読者をしらけさせてしまう技術だが、この作品は見事なバランスで成立させ、筆者様の驚くべき技量の高さをさりげなく垣間見させる重要なポイントとなっている。ぜひ、楽しんでほしい。
だが、それでも語り終えれない。
最後に言葉の魅力。オープニングでこの壮大な物語の幕開けが、映画の様に見事に脳内で映像化され、読む者の心を一気に鷲掴みにする。その後も続く様々な小さな場面でさえ、生き生きとその情景は浮かび続ける。非凡なんてものじゃない。間違いなく言葉の神様に選ばれた人間にしか出来ない芸当だ。ちょ、ちょっと、自信~、は省略。
最後にこの作品が、どれだけの努力と精進を重ね、どれだけの推敲を行ない、どれだけの時間と熱意をつぎ込まれたのかと、想像するだけで私は泣きそうになる!
ぜひ、皆様お読みになってみて下さい!
近年のWeb小説ではなく、往年の紙で読むファンタジー小説を思わせる作風です。
風景・人物・心理の描写がしっかりされているので、作品世界へ容易に没頭できます。
また安易に最強になったりせず、丁寧に成長を描いていくので、バトルシーンもどうやって倒すのかハラハラしながら読みました。
今はまだ序盤ですが、大長編の予感。実際、文字数を見れば長編であることは確かなのですが、これは単に長いという意味ではありません。
序盤にもたくさん伏線や謎が仕込んであります。それがのちのち輝いてくるのだろうなと予感させる、長編を読むとき特有のワクワク感があるんです。
そしてもちろんキャラクターも魅力的。チート能力などなく地道に頑張る少女たちを、間違いなく応援したくなります。
一話のボリュームがそこそこあるので、ある程度時間のある時にじっくり読むのがおすすめです!
約束を守るため。
探求士としての一歩を踏み出した少女エステルとその友人ルリーテ。初心であるがゆえにいくつもの挫折と悔しさをかみしめながらも真っすぐ成長する姿は好感を覚えます。
そして腕に覚えがあるセキは等身大の男の子で色々な方々と出会うことで成長する姿をみせてくれます。
また物語における独特の言い回しや言葉の使い方。お洒落です。
的確かつ適切に説明されているので、キャラと同じ視線で説明を聞いているような感覚を覚えますし、理解しやすいように丁寧に描写されています。
このお話は登場キャラの成長を描いた優しい物語です。久々に優しさであふれた世界を眺めたという気分に浸りました。でもこれは冒険活劇、ドキドキ・ワクワク・ハラハラもしっかり詰め込まれているので、ファンタジー好きの方にお勧めです。
あとですね。個人的感想としてカグツチさま最高です!
どうして最高かというと…………気になる方はぜひこの物語を読んでみてください。