50.決勝戦その8
元気を失くした雄の浮かない表情を凛は見ていた。そして自分にも一気に疲労感が押し寄せてくるのを感じた。
雄を元気付けなければと思うのにそれどころではない。さっきまでの感動とハイの尻ぬぐいが回ってきたのだ。
パワーを出し過ぎた。身の程をわきまえていなかった。が、後悔してももう遅い。足が木の棒のようだ。手を上げてキープするのすらしんどい。
奏歩を見た。重い身体を引きずっているのが見て取れた。やっぱり。皆疲労が蓄積されているんだ。
限界がきている。麻帆を見た。苦しそうに肩で息をしている。信子は。ワンテンポもツーテンポも遅れている。
第3中は一気に、砂の城が崩れるかのようだった。急ピッチで積み上げてきた実力。
それはけして嘘物では無かったが脆くもあった。自分たちの体力の限界をわかっていないという弱点をつかれた。
山本学園のコーチの手のひらの上で泳がされていたともいえる。
弱点に気づいた時には時既に遅し。村上先生ですら彼女たちのパワーを過信してしまった。
調子の良い波が何度も訪れたことに疑問など抱いていなかった。
だが今確実に足が止まっている。敵はここぞとばかりに雄を狙う。雄は皆の精神的な支えだった。
唯我独尊の奏歩ですら雄には一目置いていた。何が勝っている訳でも無かったが雄は人に好かれる天性のものを持っていた。その雄が苦しそうに溺れているのをみて奏歩は泣きたい気持ちになった。
あたしたち、ここまでなのか。せっかく頂点を目指してきたのにここで敗北するのか。
点差はひっくり返って12点ビハインド。78対66と第3中はこの8分間で2得点しか出来なかった。
バスケットガール 冬見雛恋 @huyumihinako
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