一瞬を切り取る希望の絵

似顔絵師・三宅のキャラクター性は、その残酷な家族関係や似顔絵師としての苦悩も相まって、非常に諦観しています。
一方で、転生した似顔絵師としての彼女は、金になる風景画には目もくれず、あくまでも似顔絵に拘り続け、たとえ売れずにホームレス生活になろうとも似顔絵を描き続けます。

しかし、彼女が転生した世界は、現実的な夢しか抱かない人ばかりでした。
三宅は似顔絵師として仕事をする中で、騎士の夫婦、獣人の子ども、同じ画家の男性、酒場の店主……、それぞれ個性的な人物と関わり合い、希望ある出来事、残酷な出来事に遭遇します。

似顔絵師として人を見る目を持つ三宅は、そんな中で、画家としてどのような夢をキャンバスに描くのか。
三宅が何故、似顔絵に拘るのか、その夢を思い出した時、彼女の描く絵はたとえ一瞬を切り取ったものに過ぎずとも、人々に夢と希望を与える絵になる……。

残酷な世界で、一条の光が射すような、そんな物語でした。

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