紐解かれていく記憶と何より大事な靴

 BLを下地にした中世の物語であり、同時に不確かな記憶に向き合おうとする青年の話でもあります。
 最終話の前話、赤い靴だけ残して他を全て寄付に出した描写の鮮やかさが好きです。静かに靴箱を閉めるように、宝物をひとつだけ仕舞い込むように。
 紐解かれ明かされる主人公の傷口は痛々しいものですが、彼はそれを傷として受け止めていく。そして最愛の相手と出会った時の記憶として抱きしめて生きていく。
 そうした克服の物語として受け止めました。これからの二人の幸せを願っています。