柔らかくて甘い、けれど鋭利に刺さる物語

 ある日を境に、世界中の弾丸がマシュマロになり #realmarshmallowbullet というハッシュタグがSNS上で流行り出す。
 変わったのは弾丸だけではない。液状の兵器はジンジャエールに、気体状の兵器は綿菓子へと姿を変えていった。

 一見すると平和の序章にも受け止められるその光景。
 人を殺める兵器が優しい甘さのお菓子になるだなんて、まるで夢のような話だ。
 もしかすると世界中から物騒な武器は全て消え、世界は平和になるのかもしれない——とここまでニコニコと読者は思いを馳せて読むのだろう。

 けれど……ここから先がこの作品の最も凄いところ。
 ふんわりと、まるでマシュマロのように描写されている日常の中の恐ろしさ、人間の持つ感情とその奥底に潜む悍ましさ。
 それが柔らかく読みやすい文体で、しかし確かにそこに存在している。

 読んだ後の余韻が途轍もない一作です。
 アナタはこんな世界になったら、どう動く——?

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