少し先の未来を話そうか

Rod-ルーズ

第1話 マリーナ

「水島君、田島さんの経過記録を書いていってね。あ、あと家族に電話連絡をしておいて!あそこの家族って一週間に一回電話がなかっただけでクレーム入れてくるからさ!」


「はぁ・・・わかりました」


俺の名前は水島圭太。今年で26歳となる四年目の介護職員だ。ちなみに現在進行形でやる気はない。第一、この仕事を就職した理由も「簡単に内定を取ることできた」からで周りの連中と比べて誇れる理由がない。だからこそ、やる気なんてなかった。


(また今日も残業か、フロア業務以外の時間を寄越せよ…事務仕事するために毎回残業しなきゃいけないこっちの身にもなれって…)


ブラック過ぎてはいないが、新卒でさえ定時で帰宅できないほどだ。ブラックと言っていいだろう。そんな施設にもう4年も過ごしていると、数少ないやる気やモチベーションも枯渇していくのが目に見えており辞めたい気持ちが日々募ってくる。

そんなことを考えつつ定時の時間になってもキーボードを叩いていた。


「缶チューハイが唯一の癒し・・・こんな言葉を学生時代の自分が聞いたら涙が出るだろうなぁ~」


結局のところ家に帰りついたのは午後8時だった。定時は6時で二時間も残業、こんな日々を癒してくれるのはアルコールという26歳にしては少し寂しい気持ちになるが、4年間も辛く厳しい環境下にいると飲んだだけで高揚感に満たされて辛いことも忘れることができるアルコールは、疲れた体に適している。まぁ、アルコールに弱い者としては缶チューハイ2本で限界が来てしまうのだが・・・


「退職の話、また話せなかったな。ほんとズルズルいってる気がする」


決めかねていた退職の話、これをずっと話せずにいた。上司に関しては常に出勤しているし話すタイミングは、こちらから用意すれば設けることができるだろうが、4年も務めて未だに話せずにいる。

これは俺自身のせい。いつまでもうじうじとしていることが、現状維持をまねているのだ。会社だって何も文句も言わずに働いている職員に特に気に掛けることもない、普段と同じように接すればいいのだろう。

そんなことをお酒の回った頭で考えているが、どうしても答えなんて出るわけがなかった。


「もう少し買ってこようかな・・・」


普段なら収まるはずのなのに今日ばかりは酒が進む。脱ぎ捨てた洋服を再度着替えて外へ出かけて行った。


「スーパーで買ってもいいけど、居酒屋にでも行こうかな・・・どうしよう」


家で飲むのも少し寂しい気持ちはある・居酒屋にいくほどお腹は空いていない、そうしてどうしようかと店を探していると一つのお店に目がついた。


「ん?ここってbarかな?marina・・・マリーナって呼ぶのかな」


始めてみたお店だ、職場と自宅からの道中でここにバーがあるなんて気づきもしなかった。openと書かれており営業はしているのだろう

俺は自然と店の扉を開いていた。



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