第2話 プロローグ❷

_1915年_スモレンスカヤ 




「待ってよ!!お姉ちゃん!」

妹が元気に駆け寄ってきた。


「はい、これお母さんから!!」

「お姉ちゃんお仕事大変だねー。私だったら、いい男でもみっけて結婚しちゃうのにぃ。」

そう言いながら、私の妹ゾーヤがお弁当を差し出してきた。


「あんたも、数年後にはこうなってるわよ。」

「げぇえええ、どこかに金持ち転がってないかなぁ」


そんな人はもちろん転がっていない!!


戦争中は男手が足りなくなる。

だから私たち女性が戦っている彼らの分まで働くのだ。


しばらく喋ってると近所のクリエチェフさんがやってきた。


「よう、嬢ちゃんたち。」


「こんにちわ!クリエチェフさん」


「嬢ちゃんたちも早く逃げな。」

「よりにもよってなんでこんな戦場の近くに住む必要があるんだ?」


「母が..ここが好きだからです。」


母は、父が私たちを置いて行ったことを信じていない。

私は一度も父の顔を見たことがない。




父は軍人だ。

それもかなり階級が高いらしい。


母はそれを自慢のように毎回話してくる。

きっと帰ってこない父のことを私たちに話して忘れないようにしているんだ。




母は看護婦だった。

ナイチンゲールに憧れていた。


父と出会ったのは、母が従軍看護婦になる頃だったそう。


きっと遊びだったのだ。






だから私は父性を名乗っていない。





こんな辺鄙な村に、母娘を残して何をしているんだと毎日やらせない思いが募る。








少し雑談した後、私は仕事へ向かった。








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