第2話 大手違法ドラッグのディーラー
「おい。売上金を流しとけ」
「わかりました。おい、そこの二人ついて来い」
男は手下二人を連れて金庫室に入った。
手下は部屋に入った後、金庫を背にして後ろを向いた。
男は暗証番号を入力して金庫を開けた。
今度は手下が床のカーペットを
そして再び男に背を向けた。
床にはマンホールのような円状の扉があった。
男はその床にある暗証番号を入力した。
「いいぞ。金を流せ」
「分かりました」
二人の若い男は金庫室からそのマンホールのような穴に
袋に詰め込まれた金を次々と放り込んだ。
格上の男は高そうな机に腰かけて、
タバコを胸ポケットから取り出すと火をつけながらそれを見ていた。
たまにカーテンの隙間から外を見て警戒していた。
「まあ、ゆっくりやれや。急ぎの仕事じゃねぇからな」
「ありがとうございます」
若い二人の男は額に汗して息を切らしていた。
少しペースを落として休み休み、金を流し込みだした。
男は机の上にある豪華な入れ物から錠剤を取り出して飲み込んだ。
今、一番人気のある違法ドラッグのZ-0だった。
「お前らもいるか?」
二人とも首を縦に振った。
「ほらよ」
二人に放り投げた。
「兄貴、いつもありがとうございます」二人ともそう言うと飲み込んだ。
「まあ、きつい仕事だからな。生きてるうちに楽しんどけや」
「情報屋から連絡はきたか?」
毎週火曜に連絡が来る事になっていた。そして今日は火曜だった。
「まだ来てません」
「なんかくせぇな」
「スピーカーで電話しろ。いつも通り振る舞え」
電話をかけさせて、そして机の上に置いた。
「もう日が落ちるぞ。なんで電話してこない?」
「すいません! 情報を集めていました」
若い男は、兄貴分のガレッドの顏を見た。
ガレッドは手で切るような所作をして、電話を切るよう目の前の若い子分に伝えた。
「情報がはいったら連絡しろ」
若い手下はそういうと電話を切った。
「お前ら、なんか聞こえたか?」
二人は顏を見合わせて、不思議そうに首を横にふった。
「情報収集してんなら、周りの声が聞こえてもおかしくないだろ?」
ガレッドは暫く
「金を流し終えたら出かけるぞ」
「分かりました!」子分は急いで流し終えた。
再び床の暗証番号にロックをかけカーペットを敷き、
厳重な金庫のロックをかけて、足早に部屋を出て、
ガレッドは車で待つボスに耳打ちした。
若い男たちは離れて視線も向けずに待っていた。
「俺が行ってきます」
「いや、お前は残れ。ジャイルを使う、奴には貸しがある」
「わかりました」
「お前は全員に一応備えさせとけ」
「はい」
ガレッドは上段に登り、手下たちを集めた。
「戦争になるかもしれねぇ。ここは要塞だが、町にいる奴等も呼んで準備しとけ!」
「わかりました!」手下たちは皆、二階にある武器庫に向かった。
ここは港に近い三階建ての建物であったが、実際は二階建てになっていた。
ライバルや警察が来ても、何も出来ずに終わるよう広間の天井は高く、
広間の天井四隅にはセントリーガンが設置され、二階に上がる手前の踊り場にも
セントリーガンが床下に設置されていた。
二階には三部屋あった。右には武器庫があり、左には貯まった金を地下道まで流れるように作られていた。そして真ん中の部屋には、隣のビルへ渡る通路があったが、
未だ一度も使った事は無かった。
中央の部屋は完全にロックすれば三重の鉄板が遮断し、
出入りできない仕組みとなっていた。
銃の操作もこの部屋で出来る仕様で、敵を殲滅できるパニックルームになっていた。
この部屋にいる手下も皆、10年以上の仲間しか入れず、信用できるメンバーだけが
入れる家だった。手下たちもそれぞれ担当地区を持ち、それぞれがその地区のボスであった。ガレッドは切れ者で用心深い性格をしていた。
「ガレッド」
「はい。何かわかりましたか?」
「ああ。スワットが来るらしい」
「舐められたものですね。海兵隊でも負ける気はしません」
「ここらで他の奴らにも、俺達の恐ろしさを教えるには丁度いい」
「確かにそうですね。勢力圏を広げるチャンスとも言えます」
「いつ来るんですか?」
「そいつは分からねぇみたいだ」
「あの情報屋と、俺が話をつけてきましょうか?」
「いや、ベリーズが右手を斬り落としても知らないと言ったらしい」
「あの女、容赦ありませんね」
「お前も似たようなもんだろが?」
「確かにそうですが、では赤外線でこの辺りを常時偵察させときます。
ドローンは音で気づかれる可能性があるので、
スワットがきたら爆破ドローンで先制攻撃をかましてやります」
「分かった。お前に任せる」
「はい。ベリーズは来るんですか?」
「いや、今回は外を任せる事にした」
「ここはお前に任せる。時がきたら中に入るから知らせろ」
「はい。お任せください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます